卵母細胞が黄体形成ホルモンの刺激により、卵成熟誘起物質に対する感受性を獲得する際、どの様な細胞内情報伝達系が活性化されているのか?

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  • What kaind of signal transduction pathway is activated during acquisition of oocyte maturational competence of fish?

抄録

[目的] 魚類卵成熟は、卵母細胞が黄体形成ホルモン(LH)の刺激により卵成熟誘起物質(MIS:アユでは17α,20β-P)に対する感受性(卵成熟能)を獲得する第1段階と、MISの刺激により卵母細胞が減数分裂を再開し、受精可能な卵となる第2段階からなっている。我々は、卵母細胞が卵成熟能を獲得する際、卵母細胞-濾胞細胞(O-F)間に形成されるギャップ結合が必須であることを昨年の本大会で報告したが、実際に卵成熟能獲得時にどの様な分子がO-F間ギャップ結合を通過しているのかは不明である。そこで本研究では、この点を明らかにする第1段階として、LHが誘起する卵成熟能の獲得が、どの様な細胞内情報伝達系を介しているのかを検証した。[方法]卵成熟能獲得前のアユ卵巣片を、プロテインキナーゼ(PK)A系およびPKC系の活性化剤と共に培養し、単独で卵成熟能獲得を誘起できるか否かを検証した。また、PKA系およびPKC系の阻害剤存在下で、同卵巣片をヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG)と共に培養し、これら阻害剤が卵成熟能獲得に与える影響を調査した。さらに、卵成熟能獲得過程におけるサイクリックAMP(cAMP)量の卵濾胞内変動をEIA法により測定した。[結果] PKA系活性化剤フォルスコリンは、単独でhCGと同等の卵成熟能誘起作用を示したのに対し、PKC系活性化剤であるphorbol 12-myristate 13-acetateには、その効果は認められなかった。また、PKA系阻害剤であるH8-DihydrochlorideはhCGが誘起する卵成熟能の獲得を有意に阻害したが、PKC系阻害剤であるGF109203Xには阻害効果は認められなかった。さらに、cAMPの卵濾胞内量はhCGが誘起する卵成熟能獲得過程において有意に上昇した。以上の結果、LHが誘起する卵成熟能獲得時に活性化されている情報伝達系はPKA系であり、O-F間ギャップ結合を通過している最有力分子はcAMPであることが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692066432
  • NII論文ID
    130007023753
  • DOI
    10.14882/jrds.99.0.103.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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