凍結融解後のウシ体内受精胚に対する暑熱ストレスの影響

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タイトル別名
  • Effect of heat stress on frozen / thawed in vivo-produced bovine embryos.

抄録

【目的】夏季の暑熱ストレス(HS)の影響として,泌乳牛の受胎率が低下することがよく知られており,初期発生胚に対する母体の高い体温の直接的な影響がひとつの要因として考えられている。このような夏季受胎率低下への対策として,初期発生胚に対するHSの影響を回避できる胚移植の有効性が報告されている。しかし,凍結融解したウシ体内受精胚に対するHSの影響についての知見は少ない。そこで本研究では,タイムラプス観察装置を用いて凍結融解後のウシ体内受精胚の形態変化を観察することによってHSの影響を検討した。【方法】供試胚として0.2M トレハロースを含む1.5M エチレングリコールで凍結された7日齢の黒毛和種体内受精胚を用いた。融解後の胚は,ガス濃度調整剤を用いた培養チャンバー内のWOW型培養ディッシュに導入し(5μl/胚),100μM βメルカプトエタノール+10%FCS添加TCM199で,38.5℃:72時間(対照区),40.5℃:6時間-38.5℃:66時間(HS区)培養した。凍結融解胚の形態変化は,倒立顕微鏡に取り付けたタイムラプス観察装置で5分間隔に72時間撮影し,記録した画像を解析に供した。【結果】融解72時間後の生存率は両区で有意な差は認められなかったが,HS区におけるハッチング完了胚の割合は対照区と比較して有意に低く(P<0.05),特にハッチング開始に至らなかった胚の割合が有意に高かった(P<0.05)。一方,胚画像の表面積から算出した融解6時間後の発育率は,両区で有意な差は認められなかった。また,融解からハッチング開始までの時間と,ハッチング完了までに要した時間は,HS区が対照区よりも長くなる傾向が認められたもののその差は僅かであった。なお,採胚時のステージ,ランクと凍結融解後の形態変化との間に特定の関係は認められなかった。以上の結果から,凍結融解したウシ体内受精胚に対する40.5℃:6時間のHSは,その後の胚発育に影響を及ぼすことが明らかとなり,特にハッチング開始前に顕著な影響が認められた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692117120
  • NII論文ID
    130005457705
  • DOI
    10.14882/jrds.105.0_1143
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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