遺伝子改変スンクス作製に向けた胚移植法の確立

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抄録

【目的】遺伝子改変マウスやラットを用いた生理機能解析は,生命現象の解明に大きく貢献している。しかし,マウスやラットで欠失した遺伝子の機能を解析するには,その遺伝子を保持している実験動物を用いる必要がある。我々は無盲腸目 (旧食虫目) に属する唯一の実験動物であるスンクス (Suncus murinus) において遺伝子改変動物の作出を目指している。本研究では遺伝子改変動物作製に必要な基礎的技術としてスンクスにおける過剰排卵誘起,体外受精および胚移植の確立を目的とした。【方法】実験には8週齢以上の雌スンクスを用いた。過剰排卵を誘起するために,妊馬血清性性腺刺激ホルモン (PMSG) とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン (hCG) を72時間間隔で腹腔内投与した。投与量はそれぞれ5.0,7.5,10 IUとし,hCG投与後すぐに雄と交配した。hCG投与後30時間に採卵し,排卵数,卵丘細胞の有無,受精率を確認した。体外受精においては,精巣上体尾部より採取した精子をTYH培地にて3時間培養して受精能を獲得させ,卵丘‐卵子複合体を加えて発生を観察した。胚移植においては,hCG (10 IU) 単独投与またはhCG投与後精管結紮した雄と交配して偽妊娠を誘起し,受精卵を移植して産子を確認した。【結果】交尾排卵による排卵数と比較し,過剰排卵誘起では7.5 IU,10 IU投与群で排卵数 (19.0±10.8個,22.0±9.4個) が増加したが,個体差が大きく,受精率はいずれも10%以下と低かった。体外受精では,媒精後24時間に2細胞期胚へと発生が進み,スンクスにおいても体外受精が可能であることが明らかとなった。胚移植においては,hCG単独投与群,hCG投与後精管結紮した雄と交配した群どちらにおいても産子を得ることに成功した。以上のことより今後,過剰排卵誘起により得られた未受精卵を体外受精させ,マイクロインジェクション法による遺伝子改変スンクスの作製が可能であると示唆された。

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