インターフェロン(IFN)τはナノ粒子の取り込みを阻害してインター ロイキン(IL)-1β産生を抑制する
抄録
【目的】IFNα(IFNA)やIFNβ(IFNB)を含むⅠ型IFNは自己免疫疾患などの治療薬として期待されている。近年,自己免疫疾患などの無菌性炎症においてインフラマソームの役割が注目されている。NLRP3インフラマソームが関与する多発性硬化症のマウスモデルでは,IFNB投与により病態が軽減される。しかし,Ⅰ型IFNは副作用や細胞毒性が高く,臨床使用は制限されている。一方,反芻動物の胚栄養膜細胞から分泌されるIFNτ(IFNT)は,他のⅠ型IFNと同様の免疫調節作用を有し,細胞毒性が低い。本研究はヒト単球細胞(THP-1)を用い,NLRP3インフラマソームを介したIL-1β分泌におよぼすIFNTの影響を検証した。【方法と結果】1)THP-1にNLRP3インフラマソーム活性化因子であるナノ粒子を添加するとIL-1β産生が増加し,IFNT処置により抑制された。また,IFNTはISG15(IFN応答因子)遺伝子発現を刺激したが,インフラマソーム関連遺伝子には変化がなかった。一方,IFNTはIL-10分泌を促進した。2)活性酸素種はNLRP3インフラマソーム活性化に重要である。THP-1にナノ粒子を添加すると活性酸素種産生が増加したが,IFNT処置により抑制された。3)蛍光物質結合型のナノ粒子をTHP-1に添加すると,細胞内への取り込みが増加したが,IFNT処置では抑制された。また,IFNT処置によりナノ粒子の取り込みに関与するMARCO(スカベンジャー受容体)の遺伝子発現が低下した。4)異物を取り込む際に重要なアクチン形成を解析するためにTHP-1に蛍光ファロイジン染色を行うと,ナノ粒子誘導性のアクチン重合の増加がIFNT処置により抑制された。以上から,THP-1においてIFNTはナノ粒子誘導性のNLRP3インフラマソーム性化を制御することでIL-1βを低減することが示された。この抑制機構には,IFNTによるナノ粒子の取り込みと活性酸素種産生の低下,IL-10産生の増加が関与すると考えられた。
収録刊行物
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- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
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日本繁殖生物学会 講演要旨集 107 (0), P-76-P-76, 2014
公益社団法人 日本繁殖生物学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680692316672
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- NII論文ID
- 130005475265
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可