エストロゲン(E2)依存的な子宮由来オステオポンチン(Spp1)によるマウス胚盤胞の接着性獲得機序

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タイトル別名
  • Ovarian estrogen regulates blastocyst adhesiveness through uterine osteopontin secretion during the implantation window

抄録

【目的】胚の着床様式は浸潤性と非浸潤性に分類されるが、いずれにおいてもその初期過程では胚の栄養膜細胞が子宮内膜上皮細胞に接着する。しかし、通常生体における単層上皮の頂上面は接着性を持たない。マウスでは、妊娠3.5日から4.5日にかけておこる血中エストロゲン濃度の一過性上昇により子宮が胚受容能を獲得する。このため、子宮内膜上皮細胞もE2依存的に接着性を獲得すると考えられている。一方で胚が接着性を獲得する機序は未だ明らかではない。そこで本研究では、マウスにおけるE2依存的な着床期子宮による胚の接着能獲得誘導の可能性を検討した。【方法】E2依存的な着床期特異的子宮が胚の接着性に及ぼす影響を調べるため、E2を阻害した2つのモデル、具体的には妊娠2.5日にE2受容体阻害剤であるタモキシフェン(TAM)を投与したモデルと卵巣除去による着床遅延モデルを用い、それぞれより回収した胚の細胞外基質タンパクに対する接着性を検証、さらに細胞-基質間結合因子の発現および局在を検討した。【結果及び考察】妊娠3.5日齢および4.0日齢の無処置マウスより回収した胚は蛍光標識フィブロネクチンに対する結合性を示さなかったが、妊娠4.0日齢のTAM処置マウス(E4.0TAM)においては強い蛍光シグナルが見られた。しかしながら、インテグリンの発現には母体E2作用の影響は見られなかった。インテグリンはその細胞内ドメインがビンキュリン等の分子と結合することで接着能を獲得するが、このインテグリンの活性化は着床期特異的に誘導されおり、胚はインテグリンの活性化により着床期特異的に接着能を獲得することが示された。Spp1は着床期子宮より分泌されるが、E4.0TAM胚およびIVF由来胚盤胞を可溶性Spp1で処置すると胚のインテグリンが活性化された。これらの結果よりE2依存的な子宮由来Spp1が胚に存在するその受容体インテグリンに結合し、インテグリン下流シグナリングにより不活性型インテグリンが活性化することで胚が接着能を獲得することが示された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692653952
  • NII論文ID
    130007024308
  • DOI
    10.14882/jrds.104.0.1024.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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