黒毛和種成熟雌ウシにおいてキスペプチン末梢投与は黄体形成ホルモン分泌および卵胞発育を刺激する

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タイトル別名
  • Peripheral administration of kisspeptin stimulates luteinizing hormone secretion and follicular development in Japanese Black beef cows

抄録

【目的】多くの哺乳類において,キスペプチンは性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌を亢進する重要な因子として注目されている。われわれはこれまでに、ウシ型キスペプチンが53アミノ酸残基からなること(第101回本大会),ウシにおいてキスペプチンC末端部分ペプチドの末梢投与が性腺刺激ホルモンの分泌を亢進することを報告した(第102回本大会)。本研究では,ウシにおいて,ウシ型全長キスペプチン(bKp-53)の末梢投与が性腺刺激ホルモン分泌および卵巣活動におよぼす効果を検討した。【方法】5~11歳の黒毛和種経産雌ウシを用いた。プロスタグランジンF投与により誘起した発情日をDay 0とした。Day 5の12時に,bKp-53(0.2または2 nmol/kg,それぞれn=3またはn=4)または生理食塩水(n=4)を静脈内に投与した。投与前4時間から投与後4時間まで10分間隔で採血し,血漿中黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌動態を調べた。また,実験期間を通じて,第1卵胞発育波主席卵胞の直径を超音波画像診断装置により毎日測定した。さらに,Day 5の6時からDay 7の18時までは12時間間隔で主席卵胞の直径を測定した。【結果および考察】2 nmol/kgのbKp-53投与により,投与前と比較してLH分泌が有意に亢進した。一方,bKp-53投与はFSH分泌に対してほとんど影響しなかった。また,4頭中1頭において,第1卵胞発育波主席卵胞が2 nmol/kgのbKp-53投与後30時間までに排卵した。排卵しなかった動物では,bKp-53投与後に主席卵胞の直径が対照群と比較して有意に増加した。0.2 nmol/kgのbKp-53および生理食塩水投与では,LHおよびFSH分泌または卵胞発育に対する影響はほとんどみられず、排卵も確認できなかった。以上の結果より、本来排卵することのない黄体期の主席卵胞を排卵させる効果を確認できたことから、ウシにおいてキスペプチンは性腺刺激ホルモン分泌を介して卵胞発育を促し、排卵を誘起することが示唆された。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692716288
  • NII論文ID
    130007024406
  • DOI
    10.14882/jrds.104.0.1003.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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