雄効果フェロモンの中枢における作用機構の検討;非繁殖期ヒツジへのNeurokinin B投与が弓状核キスペプチンニューロンにおよぼす影響

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タイトル別名
  • Effect of Neurokinin B on kisspeptin neurons of the arcuate nucleus in seasonally anestrous ewes

抄録

【目的】ヒツジでは雄効果という現象が知られており,成熟した雄が発するフェロモンが非繁殖期にある雌に作用すると,性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)/黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌頻度が上昇する。我々は,GnRHのパルス状分泌は,弓状核に存在するキスペプチンニューロンによって制御され,キスペプチンニューロンに共発現している Neurokinin B(NKB)が,その脈動的な神経活動の調節に関与している可能性を示す知見を得ている。本実験では,雄効果フェロモンの中枢における標的は弓状核のキスペプチンニューロンであり,フェロモンの作用メカニズムにNKBが関与していると考え,NKB投与による弓状核キスペプチンニューロンの活性化を調べた。【方法】コリデール種雌ヒツジを用い,非繁殖期にあたる6~7月に実験を実施した。側脳室カニューレを外科的に留置し,対照(n=3)またはNKB(0.4 nmol/kg・BW/h,n=3)を脳室内に2時間持続投与し,頚静脈から10分毎に採血を行い,血中LH濃度を測定した。投与終了後,ただちに頭部を灌流固定し,弓状核を含む組織を採取した。脳組織切片を作製し,キスペプチンとニューロンの活性化の指標となるc-Fosタンパク質の二重免疫染色を行った。【結果】血中LH濃度は,NKB投与後に上昇し,投与中のLH分泌量は,対照群に比べNKB投与群のほうが有意に高かった。また,弓状核において単位面積あたりのキスペプチンおよびc-Fos陽性細胞数は,それぞれ,対照群では18.2±5.0,10.5±1.3,NKB投与群は21.8±4.9 ,23.2±5.3であった。キスペプチン陽性細胞中c-Fosを発現している細胞数はNKB投与群では15.8±4.6であり,対照群(1.7±0.2)と比較し有意に高かった。【考察】非繁殖期雌ヒツジにおいて,NKBの中枢内投与により,フェロモン呈示同様にLHの分泌が促進されること,また,弓状核キスペプチンニューロンが活性化されることが示唆された。これらのことから,雄効果フェロモンの刺激は,NKBを介しキスペプチンニューロン群を活性化させることで,GnRHのパルス状の分泌を促進している可能性が考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692754176
  • NII論文ID
    130007024460
  • DOI
    10.14882/jrds.103.0.79.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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