マウス胎子成長に及ぼす倍数性およびインプリント遺伝子発現の影響

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抄録

【目的】哺乳類の正常な個体発生は雌雄からなる二倍体(Diploid)であることが必須である。一方,三倍体の個体発生については,哺乳類の場合,正常な個体発生は行われず,マウスでは胎齢11.5日で胎生致死となる。哺乳類の正常な個体発生には父母由来ゲノムから性特異的に発現するインプリント遺伝子の正常な発現が必要である。本研究ではマウス三倍体胚であるDiandric triploid: DATとDigynic triploid: DGTのインプリント遺伝子発現解析を行った。また,DGT胚の一セットの雌ゲノムに非成長期卵母細胞(ng卵子)を用いた三倍体胚(ng-DGT)を作製し,哺乳類個体発生におけるインプリント遺伝子と核ゲノム倍数性の関係について検証した。【方法】BDF1マウスを用い,体外受精もしくは活性化処理により作出した前核期胚を用意し,核移植によりDAT胚,DGT胚を作出した。作出した胚は体外培養-胚移植に供し,胎齢10.5日で胎子を回収し,母性発現: H19Gtl2Igf2rGrb10,並びに,父性発現: Igf2Dlk1NdnPeg3のインプリント遺伝子発現を定量PCRによって解析した。また,ng-DGT胚は,定法の二母性胚作出過程で体外受精を行い作出し,通常の三倍体胚と同様に発生能を検証した。【結果および考察】マウス三倍体胎子におけるインプリント遺伝子発現についてDiploidと比較すると,DAT胎子ではIgf2の発現レベルが有意に増加していた。また,DGT胎子は,全ての父性発現インプリント遺伝子とH19において有意な発現レベルの低下がみられ,Igf2rGrb10では発現レベルが有意に増加していた。一方,ng-DGT胎子の頭尾長を調べた結果,DAT胎子とDGT胎子の中間のサイズであった。これらのことから,マウス三倍体胎子の発生はインプリント遺伝子と核ゲノム倍数性の両面から特徴づけられていることが示唆された。

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  • CRID
    1390282680693351936
  • NII論文ID
    130005475079
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or1-15
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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