逆累帯構造形成への温度・圧力変化の影響
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- 北村 雅夫
- 京大・院・理
書誌事項
- タイトル別名
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- Effect of temperature-pressure change to the formation of reverse zoning
説明
固溶体結晶の成長時に形成される化学組成変動のよる累帯構造(組成累帯構造)は、鉱物およびそれを含む岩石の熱履歴の推定に良く用いられている。この時、界面平衡を仮定して、温度・圧力の推定が行われる。しかしながら、結晶の形成を考える上で界面平衡が仮定できない場合も多い。いま、組成累帯構造のうち、界面平衡下での分別結晶作用で生じる組成変化を正であると定義すると、正累帯構造と逆累帯構造に大別できる。したがって、逆累帯構造は、界面非平衡によって形成されたものと定義できる。このような、逆累帯構造は、天然や合成された斜長石や変成岩中のザクロ石に、しばしば観察される。前回の報告では、最近構築した、平均場近似を用いた界面カイネティックスに関する理論(Kitamura and Matsumoto: J. Crystal Growth, 260, 243-254, 2004)に基づいて、正・逆累帯構造の成因の解析を行った。その結果、等温・等圧下では、界面のカイネティックスの効果によって、逆累帯構造が形成される事を、解析的に明らかにした。多くの天然結晶の形成過程では、温度・圧力変化が生じる。今回は、温度・圧力変化(当然、結晶が成長を続ける場合に限定される)が逆累帯構造の形成に与える影響を、上記の理論を用いて、定式化し、正・逆累帯構造の形成条件を考察した。定式化の結果、等温・等圧下で界面非平衡の効果による逆累帯構造を形成し得る場合でも、温度・圧力変化によって、正の累帯構造しか形成されない事が明らかとなった。すなわち、温度・圧力変化は逆累帯構造の形成を阻害するとも表現でき、変成岩や火成岩での温度・圧力変化による通常の結晶成長過程では逆累帯構造が形成されにくいという観察事実をよく説明できる。逆に、逆累帯構造が形成する時は、核形成時や成長時に、等温・等圧の条件に近い状態を経由した事を意味する。このことは、温度・圧力変化の加速度(減速度)を定性的ではあるが読み取れる事を暗示する。このような加速度(減速度)の推定はあまり行われてきておらず、岩石・鉱物の形成過程の推定に関する新しい手法を提供すると考えられる。
収録刊行物
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- 日本鉱物学会年会講演要旨集
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日本鉱物学会年会講演要旨集 2005 (0), 78-78, 2005
一般社団法人 日本鉱物科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680707301632
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- NII論文ID
- 130005053313
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可