海洋堆積物の続成環境模擬実験における混合アミノ酸の重合と安定性

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タイトル別名
  • Experimental study of polymerization of amino acid mixtures simulating diagenetic environments on the early Earth

抄録

アミノ酸とその重合物であるペプチドの生成は,生命の誕生には必要不可欠である. アミノ酸の重合反応は吸熱反応であることから,高温条件下で反応がより促進される.そのため,海底熱水系がアミノ酸の重合及び生命誕生に適当な環境であるとして注目されてきた.しかしながら,その問題点として,高温条件下ではアミノ酸の分解も速やかに起こることが挙げられる.従って,我々は,堆積物による圧力によってアミノ酸がより安定に存在しうる海洋堆積物の続成環境を模擬した,高温高圧条件下(T = 100-200℃, P = 0.5-150 MPa)でのアミノ酸重合実験を行った.先行研究では,1種類のみのアミノ酸の重合実験が行われてきたが,本研究では,2種類のアミノ酸を混合することによって,混合によるアミノ酸の重合反応及び分解反応の影響をみることを主な目的とした.<br> 実験は,オークレーブを用い,アミノ酸の粉末試料100mgを金カプセルに封入することで行った.出発物質であるアミノ酸は,グリシンとアラニンを等モルずつ混合したもの,グリシンとメチオニンを等モルずつ混合したもの,それぞれのアミノ酸の単一系を用意した.水圧による加圧後,マントルヒーターによって加温し,反応時間は1日-16日間とした.実験生成物は,アミノ酸分析を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で,ペプチド分析を高速液体クロマトグラフィー/質量分析計(LC-MS)で各々行った.<br> 実験の結果から,グリシン-アラニン及びグリシン-メチオニンの両者の混合系において,それらの単一系よりも重合反応が促進されることが明らかになった.例えば,メチオニンは,単一系では150℃, 100 MPaにおいて実験開始16日後においても重合体の生成が確認されなかったが,グリシンを加えることでメチオニルグリシン及びメチオニルメチオニンなどのペプチドの生成が確認された.その一方で,グリシンにおいては,単一系に比べて分解反応が促進されていた.これらのことから,グリシンまたはグリシンの分解生成物がアラニンとメチオニンの重合反応を促進していると考えられる.また,圧力の影響に関しては,0.1 MPa(常圧)よりも25 MPa以上でペプチドの生成量が増加した.<br> これらの実験結果は,熱不安定なアミノ酸がペプチドに重合することによって,より安定化すること示唆するものであり,今後,さらに多くのアミノ酸を混合した系で重合反応を行うことでより大きく複雑なペプチドが生成されることが期待される.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680708563200
  • NII論文ID
    130004593276
  • DOI
    10.14862/geochemproc.57.0.176.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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