多孔質炭素材料の構造とエネルギー貯蔵分野における期待

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タイトル別名
  • Structure of porous carbon materials for energy storage applications

抄録

活性炭を代表とする多孔質炭素材料の多くは、数nm程度の微小な炭素六角網面を主体とした低結晶性の構造を有する。これら網面が単独に存在、あるいは2-4枚が平行に並んだ積層部分の間に存在するスリット型のミクロ孔から、より大きなサイズのメソ孔、マクロ孔にわたる広い細孔径分布を示すことがしばしばあり、その細孔構造や形態を目的に応じ設計することで、多くの工業的あるいは一般生活における需要を満たして来た。<br>  一方、多孔質炭素材料は導電性、化学的安定性、軽量性など多彩な特長を持つことから、エネルギー貯蔵材料としての将来が期待されている。とりわけ電池やスーパーキャパシタにおける電極としての応用を考慮した場合、電解液中のイオンがアクセスしうる細孔のみならず、これらが進入できない細孔を含めた全細孔の構造について知る必要が出て来た。さらに導電性や強度との関係から、細孔壁を構成する微小網面による構造を評価する方法の確立が求められている。 <br>  我々は原子・電子レベルから積層構造、あるいはナノからミクロメートルオーダーの組織レベルのそれぞれにおいて、以下のように適切な定量的解析方法を検討・確立することを目標とした研究を続けている。<br> (1) アルカリ賦活によるミクロ孔活性炭<br>  アルカリ賦活による活性炭はミクロ孔が大きく発達する場合があり、その組織の発達過程に関心が寄せられていた。我々はKOH賦活活性炭の炭素002格子像の画像解析を行い、結果をガス吸着測定や炭素収率の結果と照らし合わせて、2000m2/g以上の高比表面積を与える細孔構造の発達過程を基本構造・微細組織との関係から考察した。さらにこれらの格子像の変化を画像処理により定量化し、各積層体における網面サイズと積層枚数から、いわゆるスリット型の細孔の形成過程を明らかにした。<br> (2) CO2ガス化チャー <br>  石炭やチャーはエネルギー源としてのみならず、活性炭原料として今後とも重要な位置を占めると考えられ、その基本構造と反応特性を関連づけることは最適な原料選択の観点から重要である。我々は各種チャーのXRDパターンをフーリエ変換することによりその積層構造を定量的に調べ、反応特性やCO2比表面積との関係を調べた。数秒以内の短い反応時間においては、特に酸処理により鉱物成分を除去した石炭を用いた場合、積層枚数分布や結晶性を示す構造パラメータとこれらの物性値が直線的に対応することがわかった。<br> (3) 金属触媒を利用したメソ孔活性炭<br>  メソ孔構造は、巨大分子を対象とする石油化学や液相での吸着・分離プロセス等において用いられる多孔質物質において重要な役割を持つ。筆者らは、炭素源として大量に存在し今後の活用が期待される石炭に有機金属錯体を混合した前駆体の賦活により得られた試料がメソ孔を選択的に有することを、広島大学との共同研究により見い出した。TEM観察によると、これらのメソ孔は乱雑な微細組織を示す炭素中に形成されており、さらに混合した金属錯体に対応する金属酸化物微粒子(5-20nm)がメソ孔周辺に分散している様子が知られた金属あるいはその酸化物の表面では炭素の賦活反応が触媒的に促進されることから、粒子が移動・成長過程でその時点での自己サイズの細孔を形成していくものと考えられ、粒子径及びメソ孔サイズ分布の測定結果はこれを裏付けるものであった<br> <br>  さらに我々は、急速充放電が可能なエネルギー貯蔵デバイスとして知られる電気二重層キャパシタ用電極用炭素材料の開発に現在取り組んでいる。本講演ではフェノール樹脂を土台とした新規多孔質炭素材料であるカーボンエアロジェルを用いた研究例を取り上げ、金属担持や表面処理が静電容量に及ぼす影響を説明する。<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680708870400
  • NII論文ID
    130007039997
  • DOI
    10.14824/kobutsu.2003.0.159.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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