環境指標として有用なハマサンゴの骨格形成機構の解明に向けて
書誌事項
- タイトル別名
-
- Evaluation of biomineralization of Porites coral
説明
造礁サンゴの炭酸カルシウムの骨格は、これまで無機的な化学平衡を前提に、その化学成分の変動が温度や外界の元素変動などに規定されていると考えられていた。特に骨格中の元素・カルシウム比は海水温のよい指標として精密な気候復元の研究に貢献している。しかしながら、サンゴ骨格はサンゴの生物活動を通して形成されるため、骨格を試料として扱う場合、生物学的な観点からも骨格形成について理解することが重要である。これまでの研究から、アザミサンゴについて、骨格の成長に酵素の一種であるCa2+-ATPaseが影響していることが示唆されており、またこのCa2+-ATPaseは光によって活性化されることが報告されている。しかしこれまでに環境復元に重要な塊状ハマサンゴについては、このようなサンゴの生理学的側面からの研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、温度や光などの環境を制御して飼育したハマサンゴを用いて、これら制御要因と骨格成長率、またCa2+-ATPaseの発現量の変化を比較した。さらに飼育期間中に成長した骨格中の元素・カルシウム比変動とも組み合わせることで、環境指標としてのハマサンゴ骨格の形成機構の解明と指標としての有用性についての検証を目的とした。試料は沖縄県瀬底島周辺海域から採取されたサンゴ(P. australiensis)3群体からそれぞれクローンサンプルを作成し,温度、光量をコントロールして飼育を行った。飼育期間中は定期的にサンゴ試料の水中重量を測定し,温度区毎の成長率の変動を群体毎に評価し,成長率と微量元素変動の関係についても考察を行った。<br>実験の結果,温度変化に対する骨格成長、Ca2+-ATPaseの発現量は群体によって異なることが分かった.一方、温度と骨格中の微量元素変動の関係は群体により差があるものの,主に温度がSr/Ca比変動を律速していることが示唆された。さらに、本研究を通してこれまでに報告されていないハマサンゴからRNAを抽出する方法を確立した。
収録刊行物
-
- 日本地球化学会年会要旨集
-
日本地球化学会年会要旨集 57 (0), 47-47, 2010
一般社団法人日本地球化学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680709069184
-
- NII論文ID
- 130004593433
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可