単斜及び斜方晶系トリディマイトの結晶構造,ラマンスペクトルと原子変位
書誌事項
- タイトル別名
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- Crystal structures, Raman spectra and atomic displacements in monoclinic tridymite and its higher temperature orthorhombic phase
説明
はじめに.常温で見られるトリディマイトにはいくつかの結晶相が知られている.それらの中には試料調整のための粉砕で構造変化を示す事まであることが知られるようになった.従って報告されているデータがどの状態のものであるのか常に注意しなければならない.特に粉末試料を用いる研究では結果の解釈に格段の注意が必要である.本研究では単斜晶系トリディマイト(MC)の粉末試料及び結晶破片(しばしば双晶している)についてDTA, X線回折,ラマン散乱データを室温から500℃の範囲で測定し,またそうして得られた結晶構造に基づいてラマンスペクトルの計算を行った. また全振動数領域に渡って,特徴的な変位パターンを求めた.試料調整の問題点. 珪石レンガ表面に成長した結晶とその粉末試料を使用した.粉末試料の解析から乳鉢によるMCの粉砕化に伴ってMX-1と呼ばれる“変形相”が得られること,MX-1比率が加熱冷却の繰り返しで増加すること等を確認した.また適当な熱処理によってこの状態を殆ど純粋なMCに戻す事が出来ることを確認した.単結晶回折では微小片を集めて,単一ドメインに近い試料を選んだ.ラマン散乱では結晶砕片(双晶)を用いた.これら単結晶測定では全てMCであることが確認された.MC構造の温度変化と相転移. 以前の粉末試料による研究で報告されているようなMCとその高温側の斜方相(OP)の間の中間相の存在(De Dombal & Carpenter,1993; Cellai et al.,1994)は確認されず,単結晶実験(ラマン,X線回折)によればMC相は直線的な温度変化を示し,110℃でOPに急激に変化する事が明らかになった.クリストバライトの正方_-_立方転移等と類似した典型的な1次転移であり,石英のa-b転移やトリディマイトの高温相間転移の様な特異性を示さない.OP構造解析. OP相はその上の斜方相OCの3x1x1超構造で,超構造反射は弱く,しかも温度変化に“敏感”であるようにみえる.従来の報告(Kihara, 1977)は座標,温度因子の精度において改善の余地があり,この座標に基づくスペクトル計算は満足いく結果を与えなかった.今回はCCD検出器による微小結晶の強度測定により,規則構造のモデルによる精密化に成功した.ラマンスペクトルとフォノンモード. スペクトルの計算は今回決定した構造パラメタに対してプログラムVIBRATZ (Dawty, 1987)を使い,またEchepare et al (1978)のvalence-force-field (VFF)を用いて行った.計算スペクトルは測定と良い一致を示し,これにより振動数と変形パターン,およびそれらの関係について詳細な議論が可能になった.またSiO4四面体の動的な“disordering motion”と関係付けられる低振動数フォノンモードを確定し,disorderモデルについて提案する.
収録刊行物
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- 日本鉱物学会年会講演要旨集
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日本鉱物学会年会講演要旨集 2004 (0), 39-39, 2004
一般社団法人 日本鉱物科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680709800832
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- NII論文ID
- 130007040163
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可