帯状疱疹における痛み定量評価の試み―Visual analogue scale:VASとの比較意義

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  • A Quantitative Pain Analysis Test for Herpes Zoster: Significance in Comparison to the Visual Analogue Scale (VAS)
  • タイジョウホウシン ニ オケル イタミ テイリョウ ヒョウカ ノ ココロミ Visual analogue scale VAS ト ノ ヒカク イギ

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抄録

帯状疱疹は日常診療において比較的よくみられる疾患である.近年,優秀な抗ウイルス薬が開発され,確実な診断がつけば治療は画一化されている.ただし,その疼痛のコントロールおよび評価はいまだ不十分である.現在,痛みの程度を客観的に評価する手段として主に用いられているのが,視覚的アナログ目盛法(visual analogue scale:VAS)である.この方法は簡便であり,痛みの評価の標準ともいえる方法である.しかし,VASは患者自身の主観的な評価であることから,個人差も大きくその定量的な分析は容易ではない.このような観点から,我々は,痛みの定量的な評価を目的とした痛み定量計測システムを開発した.この機器を用いて急性期帯状疱疹患者の治療前後の痛みを客観的に評価(痛み指数あるいは痛み度)すると同時に,従来の主観的評価法であるVASとの比較検討を行った.対象は年齢が18歳~84歳,男24名,女22名,計46名の帯状疱疹患者である.この結果,いずれの測定においても治療の効果が明らかな場合,痛み指数あるいは痛み度は,痛みが軽減されることを示す値に変化した.しかし,個々の症例で検討してみると,VASが増加しているのにも関わらず,痛み指数が減少している例,もしくはその逆も認められる症例も見受けられた.これらの患者を個別に分析した結果,VASはかなり心理的な要素が強く,実際の痛みを評価するだけでなく,そのときの患者の心理状態や不満などを含んでいることが理解された.このように両者は全体としては相関性を有するが,個別には相関をもたない例を含むことも明らかであった.従って,痛み指数とVASとの比較では,痛み指数が客観的な痛みの大きさを表現するのに対し,VASは患者の心理的な影響を大きく含む,主観的な痛みの評価方法であることが示唆された.以上のことより,本システムを用いての痛み評価は,痛みの量を客観的に定量評価することができ,十分に実用可能であることが確認された.

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