小児アトピー性皮膚炎の診断,治療および民間療法による悪化例に関するアンケート調査―石川県内の皮膚科専門医および小児科専門医における実態―

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抄録

石川県内の皮膚科専門医および小児科専門医におけるアトピー性皮膚炎の診断,治療および民間療法による悪化例に関する実態をアンケート法により調査した.調査の対象は石川県にて勤務または開業し,各々の学会が認定する皮膚科専門医45名および小児科専門医169名とした.その結果,アトピー性皮膚炎と診断する根拠については,皮膚科および小児科の90%近くの医師が皮膚症状を重視していること,アトピー性皮膚炎に関する検査は,小児科医の方がより多く検査を行うという傾向が見出された.食餌制限については患者が乳幼児の場合は,小児科医の中に積極的に指導している医師が比較的多かったが,患者が学童期になると,小児科においても食餌制限の指導はあまり行われていなかった.ハイリスクの妊婦,および授乳中の母親に対する食餌制限についても,小児科側に制限を指導する医師がやや多かった.ステロイド外用療法については,どのような患者に対してもステロイド外用を行わないという医師は,小児科に1名いただけで,ほとんどの皮膚科医および小児科医は,ある程度以上の皮疹に対してはステロイド外用が必要と考えているという結果であった.顔面および頸部を除く体幹・四肢の皮疹に対して主に使用するステロイド外用薬のランクについては複数回答が多数あり,皮膚科医はstrongを基本にその前後のランクのものを使用する場合が多く,小児科医では,mildを基本にそれよりも強いランクのものも過半数の医師が第一選択に入れていることがわかり,両者間に大きな差違は見出されなかった.難治例に対する処置については,皮膚科医および小児科医のいずれも約半数の医師が,ステロイド外用剤のランクを上げると回答した.民間療法としてのアトピービジネスによる悪化例を皮膚科医の44%,小児科医の24%がかなり経験し,医師の実践する民間療法もどき(医師によるアトピービジネス療法)による悪化例も皮膚科医の41%,小児科医の16%が少なからず経験していると回答した,悪徳・有害な民間療法としてあげられた具体的な商品や方法では,古典的な民間療法に近い温泉療法から比較的最近のSOD食品まで,幅広い回答があり,また,悪徳・有害な施設については,石川県内のみならず,遠く四国などの施設があげられた.以上の結果から,アトピー性皮膚炎の診断および治療,特にステロイド外用剤に対する考え方について,皮膚科医と小児科医との間に大きな差異は認められず,アトピービジネスの問題については皮膚科のみならず,小児科の現場にとっても極めて重要な問題となっていることが明らかになった.

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