洞不全症候群治療によるペースメーカー挿入を契機に発症した<i>Paenibacillus pasadenensis</i>による菌血症の1例

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タイトル別名
  • <i>Paenibacillus pasadenensis</i> bacteremia associated with pacemaker implantation for sick sinus syndrome: The first clinical case report of the bacterial infection in Japanese literature

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抄録

洞不全症候群治療でのペースメーカー挿入を契機に発症したPaenibacillus pasadenensisP. pasadenensis)による菌血症の1例を経験したので報告する。症例は30年前から高血圧治療中の78歳女性.労作時違和感から洞不全症候群を疑い,精査加療目的にて入院となった。後日,根本的治療のため,体内式ペースメーカー挿入術施行後38℃台の発熱を認めた。血液培養2セットの採取が実施され,48時間後グラム陰性桿菌を認めたが,同定検査は判定不能であった。サブカルチャーで発育したコロニーから,再度グラム染色を実施したところグラム陰性に染色された有芽胞桿菌を認めた。また劉の方法(3%KOH法)の結果と併せて総合的にグラム陽性有芽胞桿菌と判定した。しかし,自施設の有する自動同定機器および簡易同定キットでは判定不能であったため,質量分析装置と16S rRNA塩基配列解析装置を有する外部機関に同定依頼を行ったところP. pasadenensisと同定された。生化学的性状から菌名を決定する既存の同定検査ではプロファイルのない本菌は判定不能であった。本症例のように同定不能時における質量分析と遺伝子学的検査の重要性を認識した一方で,グラム染色や劉の方法といった日常的に実施する検査の重要性についても再認識した症例であった。

収録刊行物

  • 医学検査

    医学検査 65 (2), 188-192, 2016

    一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会

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