Fisher症候群と抗GQ1b抗体

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  • Fisher Syndrome and Anti-GQ1b Antibody

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説明

Fisher症候群は,急性の免疫介在性末梢神経障害であるGuillain-Barré症候群(GBS)の障害神経を異にする亜型−regional variant-であり,外眼筋麻痺・運動失調・腱反射の低下~消失の3症状(Fisher症候群の三徴)により特徴づけられる.1956年のMiller Fisherによる3症例の詳細な報告と病態に対する考察により,一つの病態単位として認識されるようになったが,ユニークな臨床症状の組み合わせの責任病巣と疾患分類上の位置付けについて,多くの議論が行われてきた.1990年代以降,糖脂質に対する自己抗体を中心にGBSの病態解明が進む中で,Fisher症候群に極めて特異性の高い自己抗体としてガングリオシドGQ1bに対すIgG抗体が同定され,この抗体を軸に発症機序の解明と,関連病態との関係の理解が進んだ.現時点において抗GQ1b抗体誘導によるFisher症候群の動物モデルは作製されていないが,①疾患特異性と抗体陽性率の高さ,②発症に先行する抗体価の上昇,③症状を説明しうるヒト末梢神経組織におけるGQ1b抗原の局在,④先行感染因子におけるGQ1b糖鎖類似構造の存在から,IgG抗GQ1b抗体が発症に関わる特異因子であると考えられている.IgG抗GQ1b抗体はFisher症候群典型例のみならず,三徴のうち運動失調などの一部の症状を欠く症例,三徴と共に意識障害など中枢神経症候を伴う非典型例などでも検出され,Fisher症候群関連病態の重要な診断マーカーとなっている.

収録刊行物

  • 神経眼科

    神経眼科 33 (2), 161-170, 2016

    日本神経眼科学会

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