血液培養陽性ボトルからの分離培養および同定に難渋した<i>Clostridium symbiosum</i>の1例

DOI
  • 仲田 佑未
    国立大学法人鳥取大学医学部附属病院検査部
  • 藤原 弘光
    国立大学法人鳥取大学医学部附属病院検査部
  • 森下 奨太
    国立大学法人鳥取大学医学部附属病院検査部
  • 室田 博美
    国立大学法人鳥取大学医学部附属病院検査部
  • 大楠 清文
    東京医科大学微生物学分野
  • 原 文子
    国立大学法人鳥取大学医学部附属病院検査部
  • 本倉 徹
    国立大学法人鳥取大学医学部附属病院検査部

書誌事項

タイトル別名
  • A case of <i>Clostridium symbiosum</i> infection for which separate culture and identification from positive blood culture bottles were difficult

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抄録

血液培養陽性ボトルからの分離培養および同定に難渋したClostridium symbiosumC. symbiosum)の1例を経験した.症例は65歳,女性.2013年5月に胸部大動脈ステントグラフト内挿術が施行され,2013年6月に実施した血液培養検査が嫌気ボトルのみ陽性となった.血液培養ボトル内溶液のグラム染色像はグラム陰性桿菌が認められたが,サブカルチャーでは発育を認めなかった.そのため,ヒト血液に培養液を加えて血液培養ボトルに接種し,新たな血液培養検査を実施するとともに,培養液からの直接16S rRNA遺伝子解析を外部機関に依頼した.新たに実施した血液培養検査は,翌日嫌気ボトルのみ陽転し,ブルセラHK寒天培地(極東製薬)を用い,嫌気培養下で翌日発育を認めた.Ryuの試験は陰性,性状確認試験では,0.001% crystal violet耐気試験はSensitive,20%胆汁耐気試験はResistant,Esculin加水分解能はNegative,硫化水素産生能はPositiveであった.質量分析装置MALDI Biotyper(ブルカー・ダルトニクス)ではC. symbiosum,VITEK MS(シスメックス・ビオメリュー)では,Clostridium clostridioforme,16S rRNA遺伝子解析ではC. symbiosumと同定された.生化学的性状,質量分析,16S rRNA遺伝子学的解析の結果から総合的に判断してC. symbiosumと判定した.血液培養検査のような,迅速かつ正確に菌を同定することが必要とされている場合で,自施設で同定困難な場合は,早期に外部機関に依頼し同定検査を進めていく必要性がある.本症例では,最終同定には16S rRNA遺伝子解析と質量分析が有用であったが,Ryuの試験,性状確認試験は本菌種同定の一助となった.

収録刊行物

  • 医学検査

    医学検査 63 (5), 563-567, 2014

    一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会

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