先天異常症候群に見られる行動発達の特徴―遺伝と行動とその理解―

DOI
  • 水野 誠司
    愛知県心身障害者コロニー中央病院 臨床第一部

書誌事項

タイトル別名
  • Characteristic Behavioral Phenotype of Congenital Anomaly Syndrome―understanding of genetics and behavior―

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抄録

<p>頭髪の色や虹彩の色,体格差といった身体的特徴がDNA上の遺伝情報によって規定されるのと同様に,人間の行動の特徴もその一部は遺伝学的な情報によって規定される表現形の一つであると考えられている.先天異常症候群はヒトにおける自然発生的なの遺伝学的変異であると考えられているため,ヒトの発生において特定の遺伝子がどのような役割を担いどのような異常の原因となるかの研究対象として,その患者の臨床像が詳細に調査されてきた.当初は患者の有する形態的な異常が主な研究の対象であったが,近年は認知や行動の特徴についての関心が高まりつつある.多くの先天異常症候群の中でも,ウィリアムズ症候群,プラダー・ウィリー症候群,スミス・マゲニス症候群,アンジェルマン症候群の患者は,認知と行動における特異性を伴うためしばしば研究対象とされ,認知科学的な解析も試みられている.症候群として認識されない非特異的な知的障害や自閉症スペクトラムにおいても,その原因遺伝子の違いによる認知と行動の特異性があることが推定されており,これらを科学的に解析するために行動の特徴を客観的かつ詳細に記述する方法についても併せて研究されている.これらの研究は遺伝子と行動の関係を明らかにする以外に,個々の疾患特性を正しく理解することによって患者の日常の行動における問題に適切に対応し,ひいては患者本人のQOLを向上させることを目的とするものである.近年では教育や療育の現場でもその実践が始まっている.</p>

収録刊行物

  • 神経眼科

    神経眼科 33 (3), 222-228, 2016

    日本神経眼科学会

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