虚血性視神経症の診断・治療に対する最近の考え方

書誌事項

タイトル別名
  • Recent Topics About Diagnosis and Therapy of Ischemic Optic Neuropathy

説明

動脈炎性および非動脈炎性虚血性視神経症の診断・治療について,自験例をもとに最近の考え方についてまとめた.動脈炎性虚血性視神経症の診断については,動脈炎性後部虚血性視神経症を経験した.日本での動脈炎性虚血性視神経症は,欧米と比較してまれで,頻度のより高い欧米の報告でも,動脈炎性後部虚血性視神経症はまれであると報告されている.また,一過性の視覚喪失の症例も経験した.動脈炎性虚血性視神経症の約30%に一過性の視覚喪失がみられ,そのうち約60%がその後永久的な視覚喪失をきたしたとの報告がある.本邦でも巨細胞性動脈炎は,後部虚血性視神経症や一過性の視覚喪失を起こすことがあることを再認識し,赤沈亢進,CRP高値がある場合,積極的に側頭動脈生検を行い,早期に治療することで永久的な両眼視力喪失を防げると思われる.動脈炎性虚血性視神経症の治療は,現在でもステロイドパルス療法が原則である.免疫抑制剤など,他の薬剤は,ステロイド抵抗例,ステロイドが高濃度で再発した例,過去にステロイドによる副作用が重篤であった例,に用いられる.トシリズマブ,メソトレキセートなどが研究されているが,明らかな効果は認められておらず,まだ発展途上である.非動脈炎性虚血性視神経症の診断については,新しい画像診断機器を用いた研究が進んでいる.レーザースペックル法を用いて,非動脈炎性虚血性視神経症では有意に視神経乳頭血流が減少し,また,OCT angiographyでは有意に視神経乳頭の血管密度が減少し,診断に有用である.これからの画像診断の診断に対する有用性の発展が望まれる.非動脈炎性虚血性視神経症の治療については,視力改善に関して現時点では明らかな効果のあるものはない.我々も非動脈炎性虚血性視神経症のラットモデルに有効であったL-arginineをヒトに用いたが残念ながら有効性は確認できなかった.また,QPI-1007を用いた治療トライアルが現在進行中である.よい結果を,期待したい.

収録刊行物

  • 神経眼科

    神経眼科 34 (3), 281-, 2017

    日本神経眼科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680721314944
  • NII論文ID
    130006152106
  • DOI
    10.11476/shinkeiganka.34.281
  • ISSN
    21882002
    02897024
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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