生後早期におけるエストロゲン投与の視床下部・下垂体・卵巣系へ及ぼす持続的影響

  • 陳 慶源
    順天堂大学医学部専攻 (解剖学第二教室)

書誌事項

タイトル別名
  • Long-Lasting Effect of Early Postnatal Treatment with Estrogen on the Hypothalamo-Hypophysio-Ovarian Axis in Female Rats
  • 生後早期におけるエストロゲン投与の視床下部・下垂体・卵巣系へ及ぼす持接的影響
  • セイゴ ソウキ ニ オケル エストロゲン トウヨ ノ シショウカブ カスイタイ

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抄録

ウイスター系雌ラットに出生当日より, ジエチルスチルベストロール (DES) を投与量と投与期間を色々に組合せて皮下注射し, 成熟後3カ月および6カ月で殺して, 生後早期DES投与の視床下部一下垂体一卵巣系に対する影響を調べた. DES投与群のすべての個体で性周期の消失が認められたが, 生後10日間, 1μg (第2群, 対照群を第1群) または7μg (第3群) のDESを投与された二つの群では, 卵巣重量の減少, 黄体形成の欠除が認められ, 多数の大きな胞状卵胞からなる不妊卵巣の組織像を示した. 生後20日 (1μgを10日間, 2μgを11日から20日まで, 第4群) および30日間 (1μg, 2μg, 4μgをそれぞれ10日つつ, 第5群) DESを注射された動物群では, さらに卵巣の萎縮は著しく, 卵胞腔のほとんど発達しない小さな卵胞のみからなっていた. この結果はラジオイムノアッセイによる下垂体および血漿中のFSHとLHの測定結果とよく相関しており, 3カ月と6カ月で殺したいづれの場合でも, ほぼ同じ傾向を示し, 持続的に下垂体ゴナドトロピンの分泌に変調を来たしていることが確認された. とくに, 長期間投与群 (第4, 5群) では, この傾向が著しく, ゴナドトロピンの下垂体における合成および分泌が新生時DES投与により, 投与終了後も持続的に著しく抑制されていることが判明した. このことはこれらの群の下垂体前葉の電顕像が, 腎被膜下に移植された場合のゴナドトロープの萎縮像によく似ており, 視床下部性中枢からのLH-RHなどの影響の低下を推測させる. さらに, DESの投与量の総和が等しい第3群と第5群では, 明らかに投与期間の長い第5群の方が影響が顕著であった. これらのことから, 新生時からのDESの投与により視床下部の性中枢に不可逆的変化を誘起すること, さらに1日の投与量よりも, 投与期間の長さが重要であり, 性中枢の生後発生の過程で長く性ステロイドの影響を受ける方が, 思春期発来後の性中枢の機能の不可逆的低下の程度が大きいことが確かめられた.

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