黄色ブドウ球菌におけるRNAポリメラーゼ遺伝子の突然変異はLinezolidの高感受性化に関連する

  • 香本 晃良
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学
  • 崔 龍洙
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学 順天堂大学医学部細菌学講座
  • 江端 望
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学
  • 渡辺 由紀子
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学
  • 松尾 美紀
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学 順天堂大学医学部細菌学講座
  • 片山 由紀
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学 順天堂大学医学部細菌学講座
  • ピヤマ ペッチャロン
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学 順天堂大学医学部細菌学講座
  • 平松 啓一
    順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学 順天堂大学医学部細菌学講座

書誌事項

タイトル別名
  • THE MUTATION OF <i>rpoB</i> GENE ENCODING BETA-SUBUNIT OF RNA POLYMERASE IS ASSOCIATED WITH IMPROVEMENT OF LINEZOLID SUSCEPTIBILITY IN <i>Staphylococcus aureus</i>
  • オウショクブドウキュウキン ニ オケル RNA ポリメラーゼ イデンシ ノ トツゼン ヘンイ ワ Linezolid ノ コウカンジュセイカ ニ カンレン スル

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抄録

2008年に, われわれは黄色ブドウ球菌 (S. aureus) におけるvancomycin (VAN) 耐性を検討する過程でVANとlinezolid (LZD) の感受性の逆相関関係を見出した (Watanabe Y, et al: Antimicorb Agents Chemother, 2008; 52: 4207-4208). 本研究ではその遺伝学的メカニズムの解明を目指し, 以下の実験を行った. まず, 世界各国で分離されたvancomycin-intermediate S. aureus (VISA) 株を, VAN耐性に影響することが知られている遺伝子の変異タイプ別にrpoB, vraSR, graRS, clpP, およびwalRK変異グループに分け, LZDとVCMの感受性を検討した. これら40株中, rpoB, vraSR, graRS, clpPおよびwalRKの変異株数はそれぞれ29 (72.5%), 9 (22.5%), 4 (10%), 3 (7.5%) および23 (57.5%) であった. そのうちrpoB変異グループがLZDに最も高感受性であった. また, hVISA Mu3株およびそのgraRrpoB変異株を用いて行った感受性のpopulation解析では, rpoB変異株におけるLZDの顕著な高感受性化がみられた. 一方, graR変異株ではLZDの高感受性化より, VANの低感受性化が顕著であった. 次に臨床分離MRSA7株からrifampicin (RIF) およびVANで選択したVAN低感受性変異株それぞれ41株 (MRSA-RIF) と46株 (MRSA-VAN) を用い, LZDおよびVCMのMinimum inhibitory concentration (MIC) を測定した. MRSA-RIFとMRSA-VANは親株に比べLZDに対して高感受性化し, MICはそれぞれ0.45±0.25mg/lおよび0.24±0.28mg/l減少した. 一方で, MRSA-RIFおよびMRSA-VANは親株に比べVANに対して低感受性化し, MICはそれぞれ0.40±0.37mg/lと1.21±0.74mg/l上昇した. さらに, rpoB変異によるLZDとVCMの感受性への影響を明らかにする目的で, VANに感受性のMRSA株N315ΔIPをRIF 1mg/lで選択して得られたrpoB変異株の, VANおよびLZDの感受性を検討した. その結果, LZDにおいては全株で高感受性化が認められたが, VANでの低感受性化は1株を除いて認められなかった. 以上の結果から, 黄色ブドウ球菌におけるLZDの高感受性化には, rpoB変異が最も強く関連していると考えられた. また, RIF耐性黄色ブドウ球菌感染症の治療に, LZDが有効である可能性も示唆された.

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参考文献 (24)*注記

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