パーキンソン病の原因・治療について

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パーキンソン病はアルツハイマー病についで多い原因不明の神経変性疾患である. 大脳基底核のドパミン神経細胞が比較的選択的に脱落し, 運動機能障害が目立ち日常生活動作 (ADL) に大きな影響を与える. 約5%の患者さんには明らかな遺伝的背景により発病しているが, ほとんどは孤発性である. そのため, 複数の遺伝子および環境因子が影響する多因子遺伝病であると考えられている. さらに, パーキンソン病患者の剖検脳でLewy小体といわれる封入体が特徴であり, 封入体形成の機序を解明することで病態を明らかにできると期待されている. 遺伝的素因の面からは家族性パーキンソン病の原因遺伝子を突き止め, その遺伝子がコードする蛋白の機能を解析することで多くの知見が得られている. 家族性パーキンソン病の原因蛋白の多くは蛋白分解系, ミトコンドリア関連蛋白, 酸化ストレス, 膜輸送, 小胞体ストレスなどに関係しており, これらの細胞内機能が障害を受けることで発病すると考えられている. 環境因子としてはMPTPの発見が大きな手がかりとなっている. この薬剤はミトコンドリアの複合体Iを阻害するが, 曝露するとパーキンソン病類似の症状になる. また, 殺虫剤やプロテアソーム阻害剤などを実験動物に曝露するとパーキンソン病類似の変化が脳に出現することも報告されている. パーキンソン病の治療は1960年代にレボドパを補充することで症状は劇的に改善することが発見され, それ以降ドパミン受容体を刺激することが治療の中心になっている. レボドパ治療は最も有効であるが, 長期投与でウェアリングオフ, ジスキネジアといった症状の日内変動が問題となり, ドパミン受容体作動薬は日内変動の抑制はできるが眠気, 吐き気, 下腿浮腫, 心臓弁膜症などの副作用が問題になる. そのため, 個々の症例に併せて, 薬物調整をすることで, 長期にわたって日常生活維持させることが重要である.

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