皮膚疾患の症状と漢方 (メカニズムから)

  • 舟串 直子
    順天堂大学医学部附属練馬病院皮膚・アレルギー科

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タイトル別名
  • ヒフ シッカン ノ ショウジョウ ト カンポウ(メカニズム カラ)

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抄録

漢方とは2,000年以上前の漢の国の方剤である. 日本には西暦500年ごろ伝来されたといわれており, その後独自に発展し, 日本の伝統医学となった. 当時は現在のような血液検査も画像診断もない時代であり, 診察も四診すなわち望診, 聞診, 問診, 切診のみで治療を行っていた. 望診とは視診, 舌診のことであり, 聞診は聴診, 臭診, そして問診は通常私たちが質問する現病歴既往歴のことである. 切診は腹診, 脈診, 背診などでの診断であり西洋医学の診断とは異なる. 診断して病名に基づいて処方を行う西洋医学とは異なり, 漢方は同じ風邪でも一人ひとりの症状にあわせて処方は異なる. また診断名がつかない病態でも症状に対して処方できる. われわれが臨床で診断に苦慮するのと対照的で漢方の考えからであれば診断で悩む必要がない. 現代において求められている医学はより副作用や薬の効果なども遺伝レベルで考慮された一人ひとりにあわせたオーダーメイド医療であり, それは高度な技術により実現化されつつある. ここでの病気のとらえ方としては臓器別, 疾患別ではない. 全身を個としてとらえる漢方の考え方が活かされる時代になってきているのではないだろうか. 漢方薬は生薬を組み合わせ相互作用で相乗効果や抑制効果を生み出している. そしてある状態に対して使うことで個体の恒常性を保つ方向へと導くように設計されている. この条件がいわゆる証である. 証は陰陽, 虚実の4パターンに大きくわけられ, それぞれに呼応する病態に対して使う方剤が決定される. 今回大学院の研究テーマとしてアトピー性皮膚炎モデルマウスに漢方薬を投与して効果を検証する実験を行い漢方を勉強する機会をいただいた. 重症のアトピー性皮膚炎の患者の中には漢方治療を希望する患者も多く, 標準的なステロイド治療では難治の症例で次のステップの治療が求められている. 今後さらにエビデンスを集積していくことが肝要と考える.

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