牧草類の根の生長 : 2.根の首振り生長についての細胞学的検討

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  • Root Growth of Forage Crops : 2. Cytological approach to the rotation growth of root tips
  • ボクソウルイ ノ ネ ノ セイチョウ 2 ネ ノ クビフリ セイチョウ ニ ツ

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抄録

トウモロコシ(品種ホワイトデント)の発芽種子を水耕して得た種子根の先端を採取し,パラフィン法によって10μづつの根の縦断および横断による連続切片の永久プレパラートをつくり,デラフィルドヘマトキシリン法又はゲンチアンバイオレット法によって根端組織内の核分裂像を調査した。得られた結果は次のとおりである。1)縦断切片の調査結果によると,細胞の新生から分裂を繰り返していたものが伸長を開始する位置は,表皮,皮層,中心柱の各組織によって左右がズレている。根端の細胞分裂も後部における細胞の伸長も非対称的な分布になっているが,これは根端の首振り生長を組織的な面から裏づけているものと考えられる。2)核分裂は根端から1,400μmの位置までみられる。分裂は表皮,皮層,中心柱の各々の組織に認められ,根端から510〜600μmの位置に核分裂の最大になる部位がある。3)連続横断切片の鏡検結果から分裂率(核分裂している細胞数×100/視野中の総細胞数)を求めた。これを180づつの2つの視野に分けて100μm毎に集計し,検討したところ,根端から1,400μmに至るまでに2つの視野の分裂率が6回逆転することがわかった。これは根端における核分裂像の偏在とその周期的な移動を示すものである。4)根端から7mmまでは細胞の長さが伸長し,125〜155μmになる。これは生長ホルモンの力の大きさを示すものである。また,伸長帯における細胞の長さは中心柱や皮層で長く,表皮細胞で短かい。5)根端の「曲げ」に反応する部位を知るため,まっすぐに伸びかけた種子根を逆さに立て,2日後に150〜160°彎曲した材料の縦断切片の顕微鏡写真を用いて,先端から10ヶずつの細胞の位置を直線で結んでみると,根が曲がるのは根端から1.5mmの位置であり,組織的にみると,曲がる外側の表皮,皮層の両組織の細胞の伸長が著しい。根の彎曲は分裂帯で反応するよりも伸長帯の外側の組織の細胞の伸長によって直接曲がると考えた方がよい。以上要するに,根端細胞の伸長開始部位の立体的なズレ,これを促がす核分裂像の立体的な偏在とその周期的な移動が根端の細胞の伸長開始部位の立体的なズレをもたらし,このズレは根の基部にいたるほど拡大する。根端の「曲げ」は分裂帯でなく伸長帯で刺戟を受けとめ,いつもまがりやすい状態にあるということができる。根の首振り生長は根自体のもつ内在的な生命活動の姿である。6)イタリアンライグラス,オーチャードグラス,チモシー,スーダングラス,バヒアグラス,アルファルファ,クリムソンクローバ,シロクローバの8種を用いて種子根の根端における核分裂を検討した結果,トウモロコシの種子根と同様に,分裂帯における核分裂像の立体的な偏りがみられ,これが根端の首振り生長に関係があるものと推論された。

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