異形花型自家不和合性アマ科植物ベニバナアマ(<i>Linum grandiflorum</i> Desf.)における花器官形態と花弁色の遺伝的制御

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タイトル別名
  • Genetic Control of Floral Morph and Petal Pigmentation in <i>Linum grandiflorum</i> Desf., a Heterostylous Flax
  • Genetic Control of Floral Morph and Petal Pigmentation in Linum grandiflorum Desf., a Heterostylous Flax

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説明

異形花型自家不和合性植物では thrum と pin と呼ばれる 2 つの形の花が存在する.thrum と pin はそれぞれ短い花柱と長い花柱からなり,受精は異なる形の花の間でしか成立しない.アマ属の異形花型自家不和合性はダーウィンの時代から研究されてきている.自然集団での,花器官の形態,自家不和合性やその他関連の形質について解析は行われているが,分離集団を利用した遺伝解析の報告は無く,その遺伝様式は解明されていない.我々はベニバナアマの分離集団を作成し,分離個体の花柱と雄ずいの長さを調査した.花柱と雄ずいの長さの比を元に分類すると,分離個体を明確に thrum と pin に分類可能であり,その分離比は 1 対 1 であった.pin の花柱は thrum の約 1.6 倍の長さであった.pin の花柱が長い要因を調べるために花柱細胞の長さを測定したところ,pin の花柱細胞は thrum より長くその比は花柱長の比と同程度であった.これらの結果から,異形花型自家不和合性を示すベニバナアマ属の花形態は他の典型的な異形花型自家不和合性種と同様に単一の遺伝子座に座乗する 2 つの対立遺伝子によって制御されており,花形の差は細胞伸長の違いによるものであると考えられた.この分離集団を利用して,S 候補遺伝子である TSS1 の遺伝子型の解析を行ったところ,thrum 表現型と共分離しており,TSS1S 遺伝子座に連鎖していることが明らかとなった.また,この分離集団では 3 つの花弁色(赤,桃,白)の個体が存在していたが,白花弁の thrum と赤花弁の pin は存在していなかった.このことは,花弁色は不完全優性の関係にある 2 つの対立遺伝子からなる単一の遺伝子座によって支配されており,その遺伝子座は S 遺伝子座と連鎖している可能性を示すものである.

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