超長命性でかつエチレン低感受性のカーネーション系統 806-46b の選抜

  • 小野崎 隆
    農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所
  • 八木 雅史
    農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所
  • 棚瀬 幸司
    農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Selection of Carnation Line 806-46b with Both Ultra-long Vase Life and Ethylene Resistance

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抄録

花持ち性は,切り花を購入する消費者にとって最も重要な特性のひとつであり,花持ち性の遺伝的な改良が望まれている.著者らは交雑育種によるカーネーションの花持ち性の向上に関する研究を 1992 年より行ってきた.花持ち性が極めて優れ,かつ,エチレン低感受性の系統を開発するために,2003 年から 2010 年まで 3 世代にわたる交配と選抜を行った.2010 年に,系統 606-65S と 609-63S との交雑後代 50 個体から,非常に優れた花持ち性(超長命性)でかつエチレン低感受性の系統 806-46b を選抜した.系統 806-46b の花持ち日数は,品質保持剤の処理無しで 27.1 日であり,対照品種‘ホワイトシム’の 4.4 倍の超長命性を示した.エチレン 10 μL·L−1 処理に対する花弁の萎凋が生じるまでの反応時間は,対照品種の‘ホワイトシム’が 5.8 時間であるのに対し,806-46b では 21.8 時間であった.系統 806-46b の老化時の花弁形態を観察すると,エチレン低生成能を有し花持ち性の優れる選抜系統における老化症状である花弁外縁部からの褐変化が起こりにくく,花弁からの水分が徐々に失われることにより表面の張りを失い観賞価値を失うという特徴があった.この珍しい老化形態は,以前報告した超長命性系統 532-6 と同様であった.系統 806-46b の老化時のエチレン生成量は極めて低レベルであり,かつ,ACC 処理後のエチレン生成量も極めて少なかった.系統 806-46b へのエチレン処理後,外見上は花弁の萎凋を生じていないが,自己触媒的なエチレン生成は誘導されており,自己触媒的エチレン生成能は正常と考えられる.

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