ホスト国環境と日本企業の海外研究開発活動 : 研究開発拠点データを用いた実証分析

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タイトル別名
  • Host-country Environment and Overseas R&D of Japanese Firms : An Empirical Analysis Based on Affiliate-level Data
  • ホストコク カンキョウ ト ニホン キギョウ ノ カイガイ ケンキュウ カイハツ カツドウ : ケンキュウ カイハツ キョテン データ オ モチイタ ジッショウ ブンセキ

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抄録

本稿の目的は、日本企業による研究開発国際化の特徴を明らかにすることである。より具体的には、日本企業が海外で研究開発拠点を設置して研究開発活動を行う際に、ホスト国環境として何を重視し、どのような特徴を有する国において積極的に研究開発活動を行っているのかを明らかにすることである。そのために本稿では、日本企業の海外研究開発拠点についてのデータを用いて分析を行った。これまで研究開発の国際化に関する先行研究の多くが、産業レベルもしくは企業レベルでの分析を行っており、研究開発拠点レベルのデータを用いた分析は非常に少ない。本稿は研究開発拠点レベルのデータを用いることで、これまでの先行研究による分析結果を補完し、日本企業の海外研究開発活動についてより詳細な知見を得ようとするものである。日本企業の143の海外研究開発拠点についてのデータを分析した結果、まず全体的な傾向として、日本企業が海外で研究開発を行う際には、ホスト国におけるイノベーション活動の程度よりも、市場の規模を重視しているということが明らかになった。この分析結果は、日本企業が海外研究開発において新技術の獲得よりも既存技術の活用を重視しているという先行研究の指摘と整合的であるが、現在においても依然としてそのような傾向が強いということを示している。また、国際ビジネス経験が豊富な企業であるほど、イノベーション活動が活発に行われているホスト国において大規模かつ積極的に研究開発を行うという仮説は支持されず、日本企業が国際ビジネス経験を蓄積したとしても市場重視の傾向が変わらない可能性もあるということが示された。これは、日本企業の国際ビジネス経験の乏しさを日本企業による研究開発の国際化が遅れている原因としてきた先行研究の主張と異なる分析結果である。これらの分析結果に基づき、本稿では、国内における密接な企業間関係という視点から、日本企業による研究開発国際化の特徴を考察した。

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