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- 古沢 昌之
- 大阪商業大学
書誌事項
- タイトル別名
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- A Study on the Human Resource Management at Japanese-affiliated Companies inBrazil : From the Perspectives of Utilization of Japanese Brazilians
- ザイブラジル ニッケイ キギョウ ノ ジンテキ シゲン カンリ ニ カンスル ケンキュウ : 「 ニッケイジン ノ カツヨウ 」 オ チュウシン ト シテ
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抄録
ブラジルにおいて日本の文化や言語に相対的に精通していると思われる日系人は、「第三文化体」として日系進出企業の競争優位に資する可能性を秘めた存在であると考えられる。しかし、先行研究によると、日系企業における日系人に対する従来の人的資源管理は、必ずしも効果的とは言えないものであった。そこで、本論文では、筆者の在ブラジル日系企業へのアンケート調査に基づき、その人的資源管理の現状と課題について、「日系人の活用」という視点を中心に考察する。調査の結果、日系企業は、自社の日系人社員の中に「勤勉・誠実・時間に正確」といった特性を見出していることが分かった。また、「日本語能力」や「定着率」「忠誠心」などの面でも満足しているように思える。しかし、かねてより指摘されてきた「現地化の遅れ」や「グローバルなキャリア機会の欠如」については進展の様子が見られなかった。さらに、日本語能力手当を支給しているケースは殆ど皆無で、日本語能力向上のための支援策等を講じている企業も少数派であった。他方、予想に反して「デカセギ帰国者」を「経営幹部・管理職・ホワイトカラー」として採用した経験がある企業は半数近くに達した。日系企業がデカセギを通して日本語能力の向上や日本文化の体得など「質的変容」を遂げた日系人に「第三文化体」としての可能性を期待している様子が窺える。こうした中、今後日系企業は上記諸課題への対応を通して「エンプロイメンタビリティ」(選ばれる雇用主となるための企業としての魅力度)を強化し、マイナスイメージの払拭に努めねばなるまい。また、日系企業は日本とブラジルのパイプ役としての日系コロニアの重要性を再確認すべきである。一方、コロニア側は、デカセギで「質的変容」を果たした日系人を巻き込み、コロニアの再活性化を図るとともに、「第三文化体」の供給拠点としての存在意義を示す必要があろう。これら諸問題の解決は長期的視点によるアプローチを必要とするものであり、現地法人への権限委譲が問題視され、駐在員が数年単位で交代する現況下においては、一子会社の責任に帰されるべき事項ではありえない。すなわち、日本企業の本社・ブラジル現地法人と日系コロニアが連携し、win-winの関係構築に取り組むことが望まれるところである。
収録刊行物
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- 国際ビジネス研究
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国際ビジネス研究 4 (1), 19-34, 2012
国際ビジネス研究学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680739360000
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- NII論文ID
- 110009489209
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- NII書誌ID
- AA12402856
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- ISSN
- 21895694
- 18835074
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- NDL書誌ID
- 023783752
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可