「替歌」の可能性

書誌事項

タイトル別名
  • The Potential of “Kaeuta”: A Study of Ibuse Masuji's “Tanima”
  • 「替歌」の可能性 : 井伏鱒二「谷間」論
  • 「 カエウタ 」 ノ カノウセイ : イブセ マスジ 「 タニマ 」 ロン
  • ――井伏鱒二「谷間」論――

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抄録

<p>井伏鱒二「谷間」(「文芸都市」昭和四年)はその〈笑い〉が高く評価され、彼の登場を印象づけた出世作である。先行文脈を反復しながらも差異づけていく本作の叙述は、農村の騒動が「運動会」に変容するという物語内容とも照応しており、本稿はその構造をパロディという観点から考察したものである。昭和初頭の農村状況を背景に、社会的慣習に承認された「名」の権力への対抗戦略として、パロディは再領土化の可能性を示している。本作には様々な先行文学の定型が引用されているが、例えばプロレタリア芸術の諷刺画を踏まえた箇所からは、〈笑い〉の表現に対する井伏の模索も窺える。井伏自身はパロディの遊戯性を改稿によって否認するが、同時代のギャグとも共鳴した攪乱的な〈笑い〉を再検討することは今なお意義を持つ。</p>

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