危機言語記録保存と言語復興の統合へ向けて

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  • Towards an Integration of Language Documentation and Language Revitalization
  • キキ ゲンゴ キロク ホゾン ト ゲンゴ フッコウ ノ トウゴウ エ ムケテ

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抄録

本論文では危機言語研究の新たな展開として,言語復興に向けた記録保存を取り上げる.世界の多くの言語が危機に瀕している今,言語記録保存は急務であり,様々な技術の進歩によって,その意義・可能性も増している.そこで新たな枠組みの構築を目指し,ここではまず「システムとしての言語」から「実践としての言語」への言語観のシフト,記述言語学から相互行為言語学への方法論上のシフト,さらに単一言語社会から多言語社会への焦点シフトを提案する.本稿は,近年の諸研究を検討しながらこの3つのシフトについて論じる理論的考察である.ただし,言語記録保存は,その記録データが様々な形で利用されることをはじめから想定しておくべきであり,さらに関連分野との超領域的な共同研究として言語コミュニティと共に取り組むことが望ましい.また一方で,言語構造のみではなく,言語生態系全体の記録について考えていく必要もある.そこで最後に,言語記録保存と言語復興という,現状では全く個別の2つの領域を結び付けられるような統合的アプローチの可能性を探る.そのようなアプローチは,言語学に新たな方向性を示すばかりでなく,コミュニティの現在,未来へ向けての可能性を創出していくという意味で,ウェルフェア・リングイスティクスの一端を担うと捉えることができるだろう.

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