外国人住民の書き言葉の受容問題 : 生活インタビューによる事例の考察

書誌事項

タイトル別名
  • Problems with Written Language for Foreign Residents in Japan : A Case Study Based on Personal Interviews
  • ガイコクジン ジュウミン ノ カキコトバ ノ ジュヨウ モンダイ セイカツ インタビュー ニ ヨル ジレイ ノ コウサツ

この論文をさがす

抄録

日本語の書き言葉は外国人住民,特に非漢字圏出身者には理解が難しいが,具体的な調査研究はまだ十分進められていない.実態を知るには,生活場面で本人がどう対処しているかを考慮したうえで,どのような場合に問題が顕在化するかをみる必要がある.本論では,外国人住民が生活で書き言葉を受容する際に生じる問題を質的にみるためにインタビュー調査を行った.調査対象者は,常用漢字を習得していない外国人住民22名と,外国人から書き言葉が関わる相談を受けたことのある人物20名(外国人相談所8ヶ所の相談員を含む),計42名である.調査対象となった外国人は日本語のテキストの理解が困難であるが,人(仲介者)に聞く,漢字仮名交じり表記以外の視覚的情報を利用するなどのストラテジー(調整方法)を生活経験を通して身につけ,対処していた.そして,それが適切に行われていれば,テキストの受容問題は表面化していなかった.しかし,仲介者や文字以外の情報が利用できないという状況では問題が顕在化していた.問題の出現を個人による言語管理プロセスの観点から分析すると,理解すべき対象に気づかない,理解する必要性があっても調整を計画しない,調整を計画しても実施できない,調整しても有効ではない,という各段階に分類された.そして,問題の要因には,テキストが使用される社会的文脈の理解,文字以外の視覚的情報や仲介者の利用可能性,場の参加者や仲介者との関係性,説明可能な分量などが関わっていた.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ