岡本かの子「河明り」 : その「南」への志向について

書誌事項

タイトル別名
  • Okamoto Kanoko's Kawa-Akari : Longing for the "South" Found in the Work
  • オカモト カノコ カワ アカリ ソノ ミナミ エ ノ シコウ ニ ツイテ

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抄録

岡本かの子は女性の持つナルシシズムや母性神話によって作品を作りあげたとするかの子論が多いが、それだけで作品は書かれ得るか、という疑問から小論は出発している。かの子の創作への欲望の基にはナルシシズムより、むしろ果たされぬ憧憬がある。しかしその欠乏感を語ることに満足していれば結局ナルシシズムに陥る。かの子はそこから自らを「生命の充実」の場に解放する運動を小説に求めている。「河明り」は、語り手の語る出来事と、語り手が書こうと企てる幻の小説が交錯する構造を持つが、それを採ることで先に示したような、かの子の小説観を明らかにする。その際かの子の世界観を支えていた仏教の空観にも言及することになる。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 38 (9), 47-59, 1989

    日本文学協会

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