プリーモ・レーヴィの表現するユーモア : 化学者・アウシュヴィッツからの生還者・作家のケンタウロスとして

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抄録

プリーモ・レーヴィは、アウシュヴィッツ絶滅収容所から生還した化学者として作家となった。レーヴィは戦後語り手・証人としての活動を精力的にこなしながら、化学者としての仕事を続けつつ、作家としても高く評価される作品を生み出してきた。鉛のように重い現実に向き合いながらも、プリーモ・レーヴィはなぜか各所でユーモアを表現している。なぜそのようなことが可能なのか。どのような意味をもった行為なのか。それを探るのが本稿の目的である。本稿では、アウシュヴィッツに関する古典的名著である『アウシュヴィッツは終わらない』、アウシュヴィッツからの生還者が普通の生活を取り戻す過程を描いた『休戦』、初の創作短編集である『天使の蝶』、レーヴィの存在の多重性によって成立した『周期律』の四作品をとりあげて検討する。レーヴィは、ユーモアを活用することで絶滅収容所の世界を相対化し、ユーモアを介して失われた世界とのつながりを取り戻している。ユーモアは、特定の信仰や政治信念をもたない人間が極めて困難な状況に直面した際に頼れる、解放の強力な武器であると言えよう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680757527168
  • NII論文ID
    110009840893
  • DOI
    10.18991/warai.21.0_98
  • ISSN
    24239054
    21894132
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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