現代ドイツ教授学思想に関する一考察 : ドゥンカー(Duncker, L.)の「指さし」論を中心に

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タイトル別名
  • A study of the German Didactics Today : Focusing on Duncker's study of "Zeigen"
  • ゲンダイ ドイツ キョウジュガク シソウ ニ カンスル イチ コウサツ ドゥンカー Duncker L ノ ユビサシ ロン オ チュウシン ニ

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抄録

本論文の目的は,ドイツ教授学における「指さし(Zeigen)」の今日的な意義やあり方を明らかにすることである。ここでは,ギールの「指さし」論のドゥンカーによる継承と展開について,教科を越えた授業と関連づけながら考察する。「指さし」は,教育人間学の立場に立つギールによって教授学構想の中心におかれた。「指さし」をもとに構想された多視点的授業は,四つの視点から日常現実をモデル的に再構成することで,現実を批判的に解釈し社会的に参加できる行為能力の形成を目指した。しかしこの構想は,日常現実を批判的に解釈するための能力を付与することにとどまっていた。現在,世界の多彩さを引き出すだけでなく,その視点に迫る方法も開示する「指さし」がドゥンカーによって求められている。この「指さし」では視点の転換が問題にされる。たとえば教科を越えた授業においては,各教科の秩序から,それとは異なる秩序や構造へ視点を転換させることこそが重要となる。ドゥンカーの構想は,慣れ親しんだ見方から子どもたちを解放させるという点でギールの「指さし」を継承している。しかし,日常的な見方からだけでなく教科の見方からも解放させようとする点,また,新たな秩序を作り出しながら子どもたちの視点を転換させようとする「指さし」である点で,ギールらの多視点的授業よりも発展的な「指さし」が構想されるのである。

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