映像アーカイブズと質的研究の展開

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タイトル別名
  • The Development of Moving Image Archives for Qualitative Research
  • エイゾウ アーカイブズ ト シツテキ ケンキュウ ノ テンカイ

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抄録

近年、映像アーカイブズを利用した社会調査への関心が高まっている。本論では、まず、国内外にある既存の映像アーカイブズを紹介する。次に、シンポジウムのテーマに即して、使う/作る/共有する、という3つの側面から、映像アーカイブズを利用した質的研究における課題と可能性を考えてみたい。映像アーカイブを「使う」という側面からは、方法的利点と課題を整理する。利点には、新たな資料・研究視点の開発、方法論の精緻化があり、課題には、方法論の未成熟、資料の文脈や「全体性」についての錯誤を招きやすい点があげられる。映像アーカイブを「作る」という側面からも、その利点と諸課題を議論する。研究者がアーカイブ構築を経験することは、研究実践に大いに利するものである。また、アーカイブの実用性からも、研究に適した設計が期待できる。アーカイブの設計には、映像データと資料価値、分析方法を含む認識枠組みが関わり、研究を方向付ける影響力がある。映像アーカイブを「共有」するという課題は、法改正を含めて社会全体で考えていかなければ解決しない難題である。研究者ネットワークや学会が出来ることは、より公正な研究利用のあり方を模索していくことであろう。最後に、映像アーカイブズと質的研究の展開可能性について、研究論文の質や質的研究の定義とも関連づけ、映像アーカイブズ独自の方法論の必要性を述べる。

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