韓国における社会保障改革と政策展開 : 進歩から保守へ

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タイトル別名
  • Social Security Reform and Policy Development in South Korea
  • 韓国における社会保障改革と政策展開 : 進歩から保守ヘ
  • カンコク ニ オケル シャカイ ホショウ カイカク ト セイサク テンカイ : シンポ カラ ホシュ ヘ

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抄録

1980年代の新自由主義の台頭以降、福祉国家・社会保障は主にその抑制の観点から論じられることが一つの傾向であった。日本においても、グローバル化や少子高齢化の急速な進展と低成長のなかで、福祉関連の支出の増加を抑制する新自由主義的な政策基調が強まった。一方、韓国は1997年の経済危機をきっかけに社会保障制度の急速な拡大を経験し、福祉国家体制を構築した。しかしながら、韓国は「圧縮された近代」と「後発福祉国家」という条件のもと、福祉国家を形成すると同時に福祉の抑制あるいは再編を行わなければならない状況におかれている。本稿で取り上げた三つの政権においても、福祉国家の「形成と再編の同時進行」を進めるなかで、古い社会的リスクへの対応と同時に新しい社会的リスクにも対応せざるをえないという、二重の圧力に迫られていた。福祉拡大を追求したものと見なされる進歩政権10年(金大中・盧武鉉政権)、それとは異なる経済成長を最優先に考えた保守の李明博政権においても、福祉拡大の必要性を受容せざるをえなかった。その結果、李明博政権では、進歩の両政権に比べて社会支出が拡大したのである。韓国では、いまや政権のイデオロギー的志向による一方的な政策推進は不可能になっているといえよう。

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