家族と暴力 : ファミリー・バイオレンスの発生とそれへの対応

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タイトル別名
  • Genesis and Treatment of Family Violence
  • カゾク ト ボウリョク ファミリー バイオレンス ノ ハッセイ ト ソレ エ ノ タイオウ

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説明

ファミリー・バイオレンス(以下、FVと略す)は、現代の深刻な社会問題の1つである。本稿は、FVへの対応において有効とされる方法の変遷と、FVの発生を説明する有力な理論の変遷とは対応していることを示すものである。FVの説明理論としてまず挙げられるのはリスク要因論であるが、この理論においては、同一のリスク要因にさらされても、暴力が発生する家族と発生しない家族が存在することを説明できない。それゆえ家族システム論が脚光を浴びることとなり、説明の重点はリスク要因から家族システムの適応の問題へと移行した。しかし、家族システム論においては暴力を適応失敗のネガティブな結果と考えるが、FVの中には激しい体罰のように規範同調のポジティブな結果と見なされるものもあり、家族システム論ではこのような暴力を説明できない。この点を踏まえ今日のFV研究で有効な説明理論とされるのは、入れ子型エコロジカル理論である。この理論では、マクロシステム、外システム、ミクロシステム、個体発生的要因の4つのシステムが入れ子状に重なり合っていると考え、特に全体社会の価値・規範、文化を含むマクロシステムの影響を重視する。このような理論の変遷が、現実のFVとりわけ子ども虐待への対応の変遷、すなわち家族維持・福祉的傾向の弱まりと家族介入的傾向の強化に対応していることを示す。

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