責任の無限 : レヴィナスの思想について

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タイトル別名
  • L'infini de la responsabilite
  • セキニン ノ ムゲン レヴィナス ノ シソウ ニ ツイテ

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抄録

責任が無限であるという発想は、常識では理解しがたいものであり、最悪の場合、宗教的ファナティズムの暴力と結合してしまう危険性がある。二十世紀フランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスの思想は、こうした危険を乗り越えつつ、無限責任という観念に新たな積極的意義を与えようとしていた。レヴィナスの試みはまた、独特な仕方で罪責観念を構築する営みにも通じるものであり、純粋にセキュラーな観点からの接近を拒むような内実を含んでいる。以上の論点を主要な対象とする本稿は二つの部分に分かれる。第一に、責任および暴力という観点からレヴィナスのキェルケゴール批判を捉え返し、その背景には「信仰の逆説」に代わる逆説的神論が潜んでいたことを明らかにする。第二に、デリダが鋭く指摘した責任の内在的アポリアを、レヴィナス正義論の立場から照射することで、無限責任の理解へと至る新たな方途を模索する。この最後の道程には「疚しさ」という観念の復権が伴っている。

収録刊行物

  • 宗教研究

    宗教研究 80 (3), 619-640, 2006

    日本宗教学会

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