「釈善信」考 : 蓮光寺旧蔵本『血脈文集』の「親鸞自筆文書」をめぐって

書誌事項

タイトル別名
  • Examining Shaku Zenshin : An Evaluation of the Shinran Shonin ketsumyaku monju (SSKM)
  • 「 シャクゼンシン 」 コウ : レンコウジ キュウ ゾウホン 『 ケツミャク ブンシュウ 』 ノ 「 シンラン ジヒツ ブンショ 」 オ メグッテ

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抄録

蓮光寺旧蔵本『親鸞聖人血脈文集』(現大谷大学図書館蔵)には、法然が親鸞に模写を許した自らの真影に元久二年(一二○五)に「銘文」とともに記した「名の字」とされる「釈善信」の記述がある。これが法然の記名を忠実に伝えているとすれば、親鸞が同年「綽空」から「善信」と改名したことを示す決定的証拠となる。古田武彦は『親鸞思想-その史料批判』(一九七五年)においてこの記述を、親鸞が建保四年(一二一六)に性信に与え、性信が『血脈文集』を編集した際に自らが親鸞面授の直弟であることの証拠として収めた「自筆文書」の一節である、と述べた。しかし、蓮光寺本の乱丁、当該文書の文面、『血脈文集』の構成を検討した結果、筆者は、この所謂「自筆文書」は、性信没後に『血脈文集』が編集された際に挿入された偽作に過ぎないとの結論に至った。筆者は、元久二年に法然が記した「名の字」は「釈善信」ではなく「釈親鸞」であると考えざるを得ない。

収録刊行物

  • 宗教研究

    宗教研究 87 (1), 27-53, 2013

    日本宗教学会

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