旧約聖書とユダヤ教における食物規定(カシュルート)

書誌事項

タイトル別名
  • The Dietary Laws in the Old Testament and in Judaism
  • キュウヤク セイショ ト ユダヤキョウ ニ オケル ショクモツ キテイ(カシュルート)

この論文をさがす

抄録

<p>ユダヤ教の食物規定(カシュルート)は、主として(1)血の摂取、(2)肉類と乳製品の混合、(3)ブタなどの「穢れた」とされる動物の肉の禁忌を三本の柱とする。個々の禁忌の由来や理由には不明な点が多いが、旧約聖書では、いずれも問答無用の神の絶対的な命令と理解されている。旧約聖書の食物規定がほぼ今の形に体系化されたのは、いわゆるバビロン捕囚時代(前六世紀)であるが、このことは、国と土地を失って異民族、異文化の中で生きることを余儀なくされたユダヤ人捕囚民の状況と関連があろう。圧倒的優位にある周囲の異民族、異文化、異宗教に同化、吸収されないようにするために、彼らは食という、生活の最も基本的な要素を手掛かりとした。周囲と同じものを同じように食べないという生活様式を確立することによって、捕囚のユダヤ人たちは、自分たちの信仰と民族的同一性(アイデンティティ)を維持したのである。</p>

収録刊行物

  • 宗教研究

    宗教研究 90 (2), 183-207, 2016

    日本宗教学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ