社会教育における放送利用 : 学習者の定着化を中心として

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The Continuation of Learning through TV in Social Education

抄録

近年,社会教育の分野で,放送を利用した学習活動,とくにテレビセミナーとよばれる通信教育形態による放送利用がさかんになってきた。とくに,都市部を中心に1970年代前半から普及してきている。これは,家庭でのテレビ視聴とスクーリングを組み合わせた点に学習方法上の新しさをもっている。本稿の目的は,生涯教育理念の実現化過程のなかで,放送利用学習を現在の地点からより進展させるための条件を明らかにしていくことである。つまり,いかに学習者の定着化を促進させるかという問題を検討していく。そこで,放送利用学習の継続化を可能にするのは,次の2つの条件が満足される場合であろうという仮説を設定した。(1)放送利用学習が知識・技能の習得,それを通して問題解決の場として機能すること。(2)学習のしがい,生きがいといった自己確認や自己実現の場として機能すること。1982年の6〜7月に愛媛県で開講されている放送県民大学の過去5年間の全受講生1887人を対象に調査を実施した。この調査結果によると,次のような放送利用学習の継続化を促すための4つの特徴を指摘できる。(1)受講者の中途辞退者は40.5%に達している。ところで,社会教育の講座・学級では継続的なものより一回限りのものが多い。それで,学習者の定着化という問題は放送利用学習の発展にとっても解決すべき重大な課題である。(2)放送利用学習は成人の学習要求の高度化に対応できたことで注目されてきた。受講者の動機には,学習内容を専門的に深めることに関するものが多い。つまり,この放送県民大学は高度な内容を提供する学習機会として期待されている。(3)しかし,放送利用学習を発展させる要件は学習内容の高度化だけではない。別の重要な要件もある。1つは家族でのテレビ視聴を確保し,個人学習を充実させること。2つは,スクーリングの場を充実させることである。(4)さらに,放送県民大学での学習活動が受講者のすべての学習機会になっても問題が起ころう。他の学習機会(公民館など)とめ関連を深め,相互に学習活動を進展させる方向も期待される。

収録刊行物

  • 放送教育研究

    放送教育研究 12 (0), 16-30, 1983

    日本教育メディア学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282681030930560
  • NII論文ID
    110009735945
  • DOI
    10.24458/ebr.12.0_16
  • ISSN
    24330892
    03863204
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ