化学反応(<特集>高校化学 A・B の基本的概念について : 高等学校教育課程研究発表大会から)

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  • Chemical Reaction

抄録

化学反応を高等学校化学の基礎概念としてどのように位置づけるかについては, 各県の意見は多様であるが, つぎの三つに大別できるようである。(1) 化学反応そのものを基礎概念の柱として位置づける考え方。化学教育における基礎概念を「物質の構造」と「化学反応」の2本の柱としてとらえた県(愛知ほか5県), さらに「物質の特性」を加えて3本の柱に組み立てた県(宮城ほか2県)などがその例である。これらの県では, 「化学反応」の中にどのような内容を含むかについて別に示してあり, たとえば茨城県では, 化学反応における量的関係, 反応の速さ, 化学平衡, 化学反応とエネルギー, 中和反応, 酸化還元反応, の6項目をあげている。(2) 粒子性, エネルギーなどを基礎概念とし, その中に化学反応を位置づける考え方。これは, 北海道ほか数県にみられる意見であるが, 北海道の場合を例にとるならば, 基本的概念を「(1)物質は微粒子の集合体であり, 化学変化は微粒子の組み替えである。(2)物質の構成粒子はエネルギーをもち, 化学変化は粒子のエネルギーの変動である」の2本に把握し, この基本的概念が直接的あるいは間接的に関連づけられて一貫性ある学習項目とするという立場から, 化学反応が位置づけられている。その学習項目として取りあげているものには, 反応の機構(反応速度, 化学平衡など), 酸・塩基・塩, 酸化・還元, などがある。(3) 反応速度, 化学平衡, 酸・塩基, 酸化・還元などが, それぞれ一つの柱として基礎概念を構成するという考え方。これは東京その他多くの県に見られるものであるが, 基礎概念を, 学習上必須のもので, かつ関連する事項をできるだけ多く含むものと把握し, 諸概念の体系づけや教科としての組織づけをせずに, 基礎概念を選定している。東京の場合, 質量保存の法則, アボガドロ数(モル), エネルギー, 反応速度, 平衡移動, 電離およびイオン, 酸・塩基・中和, 酸化・還元, 周期律, 官能基の10個の基本的概念を選定している。各県の意見は多様であり, 上記の3分類にはいらないものも多く, また, これらの考え方を複合させて体系化を図っている県も多い。しかし, いずれの県においても, エネルギーの概念を重視した反応速度や化学平衡, プロトン授受の形で理解する酸塩基反応, 電子授受の形で理解する酸化還元反応を, 高等学校化学の基本的概念として取り扱うことについては, ほとんど異論はないように見受けられる。以下, 反応速度, 化学平衡, 酸・塩基, 酸化・還元にわけて, 各県の考え方を集約してみたい。

収録刊行物

  • 化学教育

    化学教育 16 (2), 163-167, 1968

    公益社団法人 日本化学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282681074867584
  • NII論文ID
    110001821267
  • DOI
    10.20665/kagakukyouiku.16.2_163
  • ISSN
    24326542
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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