地熱資源量の報告に関する国際的レビュー(その1)

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タイトル別名
  • Global Review of Geothermal Reporting Terminology (Part 1)
  • チネツ シゲンリョウ ノ ホウコク ニ カンスル コクサイテキ レビュー(ソノ 1)

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抄録

2012 年9 月に国際エネルギー機関の地熱実施協定(IEA-GIA)の執行委員会が,「化石エネルギーおよび鉱物資源の分類に関する国連枠組み2009(United Nations Framework Classification for Fossil Energy and Mineral Reserves and Resources:UNFC-2009)」(UNECE, 2009)およびこれまでに発表された地熱エネルギー報告書や分類スキームとの関係についての調査を開始した。UNFC-2009 は,資源やエネルギー量の評価を,次の3 つの基準軸から成る3 次元システムを用いて分類を行う,包括的かつ原理的なシステムである:<BR>・ 商業的な生産に関する経済的・社会的実現性(E)<BR>・ 現場プロジェクトの状況とプロジェクトのフィージビリティ(F)・ 現場プロジェクトの状況とプロジェクトのフィージビリティ(F)<BR>・ 地質情報(G)<BR>本報では,・UNFC-2009 が地熱エネルギーの分類スキームとして適切な枠組みかどうか,・既存の地熱エネルギー報告書や分類スキームが,UNFC-2009 枠組みの定義に対してどのように位置づけられるか,・いかにすればUNFC-2009 が地熱エネルギーの評価・報告に対する新たな国際的分類スキームとなるか,の3 点について検討した。調査した地熱エネルギー報告書と分類スキームは,以下の通りである。<BR>・ 公共報告のためのカナダ地熱コード Canadian Geothermal Code for Public Reporting( CGEA, 2010)<BR>・ 「『地熱エネルギーの将来』とその挑戦」‘“The Future of Geothermal Energy” and its Challenges’(Rybach, 2010)<BR>・ オーストラリア地熱報告コード?第2 版Australian Geothermal Reporting Code, Edition 2 (AGRCCom,2010)<BR>・「 新しい地熱用語と定義」‘New Geothermal Terms and Definition’( GEA, 2010)<BR>・ 「地球規模のEGS ポテンシャルの推定とマッピングのためのプロトコル」‘A Protocol for Estimating and Mapping Global EGS Potential’( Beardsmore et al., 2011)<BR>・「 GEO-ELEC のための資源評価プロトコル」‘A Resource Assessment Protocol for GEO-ELEC’( Van Wees et al., 2011)<BR>ケーススタディとして,米国エネルギー省の資金提供によりマサチューセッツ工科大学が出版した報告書(MIT, 2006)の主たる成果を,UNFC-2009 および上記の6 つの報告書の分類スキームに当てはめてみる。現在,MIT 報告書の成果を十分に分類できるようなスキームは存在していない。<BR>資源の分類に関する国連欧州経済委員会(UNECE)の専門家グループは,UNFC-2009 を発表した時点では,地熱エネルギーについては考慮していなかった。UNFC-2009 は,「物理的フィールド(圧力や温度など)に存在するエネルギー資源には触れない。また,地下水資源も扱わないが,非再生型の地下水を採取するプロジェクトには適用できる」と明言している。しかし,断言はできないが,経済・技術・地質の3 次元で構成されるUNFC-2009 は,地熱ポテンシャルに関連づけることができると考えられる。<BR>本報告書の著者および初期草稿のレビュアたちは,プロジェクトのパラメータさえ明確に定義すれば,UNFC-2009 の3 次元スキームは,地熱エネルギーに関する実用的・汎用的な分類の枠組みを設計する上で十分である,との結論に達した。UNFC-2009 に基づいて地熱エネルギーの国際的な分類枠組みを作成するための第1 歩は,以下の質問事項に答えることである。<BR>・ 分類枠組みを,誰が使うのか?<BR>・ 分類枠組みを,誰が維持・管理するのか?<BR>・ 報告の対象となる商品*は何か?<BR>・ 分類枠組みを,どのように規定するか?<BR>これらの質問に答えることができれば,UNFC-2009 枠組みの“E”(経済的・社会的実現性)と“F”(現場プロジェクトの状況とフィージビリティ)の基準については,大きな修正をしないで地熱エネルギープロジェクトに適用できる。しかし,“G”(地質情報)については,商品となる生産物の輸送など,地質学以外の不確実要素まで考慮する必要がある。報告の対象となる商品としては,例えば「利用可能な回収熱エネルギー」と定め,回収され,使用される熱エネルギーに対する不確定要素にもとづいて分類することもできる。この不確定要素は,地質学的見地からの生産可能性以外の多くの要素に関係している。<BR>UNEC が設立した「資源の分類に関する専門家グループ」は,UNFC-2009 のスキームを修正して,地熱エネルギーなどの再生可能エネルギーを取り入れるという観点で作業を開始した。著者は,IEAGIAの十分に取り組みにより,再生可能エネルギーに関するUNFC-2009 分類枠組みが,地熱エネルギーセクターの要望に100%応えられるものとなることを強く望んでいる。

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