書くことと祀ること : 沖縄宮古島のソウシ(<特集>「人類学at home」-日本のフィールドから-)

書誌事項

タイトル別名
  • Writing and Worshiping : A Study of the Soshi on Miyako Island, Okinawa(Special Theme)
  • 書くことと祀ること--沖縄宮古島のソウシ
  • カク コト ト マツル コト オキナワ ミヤコジマ ノ ソウシ

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抄録

本論文は沖縄宮古島の南部諸集落に伝存するソウシ(双紙)を素材にその運用の具体的な様相を記述し、関連する守護神祭祀,暦の製作にも考察を加えながら,その存在と継承とが提起する問題を指摘し,現代日本を対象とする人類学の果たしうる役割について論述したものであるここでは最初にソウシがどのような研究のなかで対象化されてきたかを振り返り,そこから人類学的な問題を抽出する。さらにそれを受けてソウシの利用の様相を筆者自身の調査データと従来の調査記録とに基づいて記述している。ソウシは例外なくマウガンの祭祀に関わり,組み込まれていることからソウシの存在がムトゥの神々と集落の構成員との間に重層複合的な関係が結ばれていることを表現していることが指摘できる。またソウシを暦注書として用いて砂川暦を作成することから近世以降の大雑書と暦との関係がソウシと砂川暦との関係と相似することも看取される。こうしたソウシの運用形態は近世日本の大雑書が南島文化のなかに受容されていった姿を示している。さらにその形成は1714年以前に既に行われており,さらなる考究は南西諸島各地に伝存する多様な暦書の研究によって達成されるであろうことが見通される。そうしてこうした書物,すなわち文字列が内容そのものとは異なった受け止められ方をし,祭祀の再編成に重要な役割を果たしていることから、高度に発展した文字社会においても人類学的なアプローチの方法は独自の位置を占めることができ,さらに歴史学や社会学との協業の一つの可能性を見出すことができるのである。

収録刊行物

  • 民族學研究

    民族學研究 65 (4), 362-375, 2001

    日本文化人類学会

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