日本海堆積物に記録された東アジア冬季モンスーン変動のシグナル

  • 池原 研
    産業技術総合研究所地質情報研究部門
  • 板木 拓也
    東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Fluctuation of late Quaternary East Asian winter monsoon recorded in the Japan Sea sediments
  • ニホンカイ タイセキブツ ニ キロク サレタ ヒガシアジア トウキ モンスーン ヘンドウ ノ シグナル

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抄録

冬季モンスーンはシベリア高気圧と周囲の低気圧との間の大気循環による現象である.東アジアではシベリア高気圧とアリューシャン低気圧や赤道・オーストラリア低気圧との間の風で特徴付けられ,日本列島周辺では北西季節風が卓越する.この低温で乾燥した北西風は,ロシア極東沿岸日本海の表層水を冷却し,沿岸付近では海氷を形成させる.冷却され,海氷形成時に排出された高塩分水が加わって重くなった表層水は沈み込んで日本海固有水と呼ばれる深層水を形成する.最近の海洋観測結果から,深層水の形成は海氷が形成される極端に寒い冬に起こっているので,海氷と深層水の形成は冬季モンスーンの指標となると考えられる.本稿では,過去16万年間の海氷の発達度合いを示す漂流岩屑の量と冷たくて酸素に富んだ深層水の指標となる放散虫Cycladophora davisianaの産出量を検討した.その結果,酸素同位体ステージ3-5においては,両者とも千年規模の変化を示し,東アジア冬季モンスーンがこの時期に千年規模で変動していたことを示唆する.両者が高い値を示す時期には冬季モンスーンが強かった可能性が高い.同時期の日本海堆積物にはやはり千年規模での変動をもつ夏季モンスーンの記録が暗色層として残されているので,これとの対応関係を見ることで,1本のコアから夏季・冬季モンスーンの強弱の歴史と両者の関係を解明できる可能性がある.<br>

収録刊行物

  • 地質学雑誌

    地質学雑誌 111 (11), 633-642, 2005

    一般社団法人 日本地質学会

参考文献 (97)*注記

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