アンコール遺跡(カンボジア)における砂岩材の劣化現象

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タイトル別名
  • Deterioration of the sandstone blocks in the Angkor monuments, Cambodia

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抄録

カンボジアのアンコール遺跡は9世紀から13世紀にかけて建造されたヒンドゥ教・仏教寺院であり, 主たる建築材料として砂岩およびラテライトが用いられている. 建造以来, 樹木の成長(第1図)や地盤の不同沈下等により遺跡の崩壊が引き起こされているが(内田・小河, 1997), それと同時に砂岩材には種々の要因による興味深い劣化現象が見られる(Uchida et al.,2000). アンコール遺跡で多用されている砂岩は, 灰色~黄褐色砂岩(長石質アレナイト, 構成鉱物 : 石英,斜長石, カリ長石, 黒雲母, 白雲母, 岩石片)であり, 全ての時代にわたって岩石学的には同種の砂岩が使用されているが, その帯磁率には系統的な違いが認められ, 帯磁率に基づき石切り場の変遷が明らかにされている. この灰色~黄褐色砂岩には, 主として次のような劣化が認められる : (1) コウモリの排泄物に起因する劣化, (第2図, 第3図), (2) 方解石析出による劣化(第4図), (3)タフォニ(第5図~第7図), (4) 日射による膨張・収縮に起因する劣化, (5) 荷重による層理面に沿った亀裂, (6) 除荷による内部応力開放に起因する亀裂(シーティング). タフォニに関しては, その原因が必ずしも明らかではなく, 今後の解明が期待される. このような自然現象に伴う劣化・破壊ばかりでなく, 盗掘, 破仏や内戦による人為的な遺跡破壊も見られる.

収録刊行物

  • 地質学雑誌

    地質学雑誌 109 (6), XI-XII, 2003

    一般社団法人 日本地質学会

被引用文献 (1)*注記

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282681215230592
  • NII論文ID
    110003009799
  • NII書誌ID
    AN00141768
  • DOI
    10.5575/geosoc.109.xi
  • ISSN
    13499963
    00167630
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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