化石花粉の有機熟成度から津軽断層の変位量を推定する

  • 氏家 良博
    弘前大学理工学部地球環境学科
  • 谷口 貴康
    弘前大学理工学部地球環境学科 現所属:北海道函館方面函館中央警察署
  • 蝦名 正輝
    弘前大学理工学部地球環境学科 現所属:青森県東津軽郡平内町役場

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of the displacement of the Tsugaru Fault by means of organic maturity of fossil pollen in sediments
  • カセキ カフン ノ ユウキ ジュクセイド カラ ツガル ダンソウ ノ ヘンイリョウ オ スイテイ スル

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抄録

青森県東津軽郡外ヶ浜町蟹田において津軽断層近傍に分布する中新統小泊層と鮮新-更新統蟹田層の地質調査を行い,堆積岩に含まれる有機物の熟成度をビトリナイトの反射率(Ro)と、花粉の明度に基づく統計的熱変質指標(stTAI)から測定した.次に,津軽断層で接する小泊層と蟹田層の有機熟成度の差,および小泊層と蟹田層中でのそれぞれの有機熟成速度から津軽断層の変位量を推定するためのモデルを考えた.地質調査と露頭観察結果から,津軽断層の断層面は鉛直で,その走向は周辺の地層の走向と一致し,地層の傾斜は30°とした.これらの値と,津軽断層の両側での統計的熱変質指標の値の差をモデルに外挿すると,津軽断層の変位量(落差; 走向スリップ成分は無視)は901~1389 mの間と推定される.この値は,地質学的に推定された断層の層位学的隔離は最大1000 m以上との見積り(三村, 1979)、重力異常からの断層の落差は約1500 mとの見積もり(松橋ほか, 1989)とも,よく一致する.有機熟成度は,続成作用,不整合,接触変成作用の研究に役立つが,断層の研究にも有効な指標である.<br>

収録刊行物

  • 地質学雑誌

    地質学雑誌 112 (10), 581-593, 2006

    一般社団法人 日本地質学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (76)*注記

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