加齢の病態とその臨床 III  薬物治療の問題点とその副作用

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タイトル別名
  • A Clinicopathological Studies in Geriatrics(III)
  • カレイ ノ ビョウタイ ト ソノ リンショウ 3 ヤクブツ チリョウ ノ モン
  • ―薬物治療の問題点とその副作用―

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抄録

老人に対しての薬物治療は, 前病歴が多いことからの薬剤耐性の問題, さらに多くの潜在性疾患が併存するための多種の薬物治療が必要なことなどから, 薬物相互作用が発症しそれが多くの副作用に通ずる.<br>老人の感染症はその病原菌が多彩で, 且つグラム陰性桿菌, 真菌, その他特異なものが少なくないし, それに対する抗生剤もbacteriostaticのものよりbactericidalのものの方がより効果があるが, 老人の腎機能の低下からその血中濃度は上昇しやすく, 多くの副作用を生じやすい, また副腎皮質ホルモンは加令によつてglucocorticoidの分泌が減少しないことから, 糖尿病, 痛風, 感染症と増悪しやすいし, digitalisでもその血中濃度の上昇から中毒を来しやすい. 同様に利尿剤であるthiazideでも低K血症, 痛風, 感染症を起こしやすい. 非ステロイド系鎮痛剤では消化管潰瘍の発症が多く, 老人では致死的要因となることもある.<br>ビタミンのほとんどは加令と共に血中濃度は減少し, 特に抗生剤投与時のV. B2, V .Kは口内炎, 低プロトロンビン血症の原因となり, V. B2, V. B12の減少は, 口角炎, 皮膚病変, 貧血の原因となり, V. Dの減少は骨粗鬆症を速進させる.<br>抗悪性腫瘍剤はそれだけでも副作用の多いものであるが, 特に老人では, 肝障害, 腎障害, 出血傾向, 感染症の原因となり, chemotherapy deathの原因となり, さらに抗悪性腫瘍剤投与後の, また免疫抑制剤として使用された後の二次的悪性腫瘍発症の問題は, 老人が発癌性因子が多いだけに注意が必要である.

収録刊行物

  • 医療

    医療 35 (6), 513-520, 1981

    一般社団法人 国立医療学会

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