新細菌性殺虫剤-<i>Bacillus moritai</i> の安全性に関する検討

  • 前橋 浩
    東京歯科大学衛生学教室 東京歯科大学薬理学教室

書誌事項

タイトル別名
  • On the pathogenicity to mammals of the new bacterial insecticide-<i>Bacillus moritai</i>
  • シン サイキンセイ サッチュウザイ-Bacillus moritai ノ アンゼンセイ ニ カンスル ケントウ エイブン

この論文をさがす

抄録

Bacillus moritai は鮎沢らが土壌中より分離し, イエバエ幼虫の体内に侵入増殖し致死させる効果のあることを見出して, 微生物殺虫剤として用途を確立した。本菌は諸外国で実用化されている Bacillus thuringiensisと異なり, 蚕に対して病原性のないことは養蚕国のわが国に有利である。すでに農林省の許可を得ているので実用化も間近い。そこで広範囲に使用された場合の人畜に対する病原性の有無を小動物を用いて調べた。微生物殺虫剤も従来の化学農薬とほぼ同じ観点に立って経口的, 経気道的, 眼粘膜などからの侵入が考えられるが, 今回は主として経口的に侵入した場合の影響を検討し, さらにマウスを用いて体内通過による感染力増強の有無についても調べた。<br>マウスに対して粉末芽胞として12.5g/kgの大量を経口投与しても何ら異常を認めず, 血中には菌を検出しなかった。しかし腹腔内注射ではLD50値は350mg/kgであり, 血中に菌を検出した。菌血症により死亡すると考えられる。腹腔内注射後経日的に血中菌および腹腔内残存菌の推移を見ると血中からは10日頃で消失し, 腹腔内には30日後にも少数ながら菌を検出した。芽胞の静注でも血中菌の消長はほぼ同様であった。さらに採血, 静注を累代的に行なって血中菌の動きを見ると3代以後では検出されず, 体内通過による感染力の増強は見られなかった。<br>ウサギに10日間の大量強制経口投与および飼料中に混入して100日間投与した実験では, 10日間の投与では血中に菌を検出しなかったが, 100日間の比較的長期の投与では少数の菌を検出した。これらは血清学的検査によって Bacillus moritai と判定できなかったので他種の細菌の可能性がある。投与検体には芽胞製造操作中に混入する菌も含まれるので, 実用化に際して工業的規模で大量生産の場合には, 混入細菌の種類および濃度を規制する必要があろう。その他には投与による特別の異常は認められなかった。

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ